そこに佇むのは、鋭い眼光で私を捉える、今日はいつも以上に不機嫌全開な黒髪のヘッド様。

予定外の人物の登場に慌ててスツールを立ち、体を翻そうとすると、一瞬のうちに引きちぎれそうなほど強い力で腕を掴まれた。

「来い」

低く唸るような声と一緒に強い力で引かれていく体。

「怒んなよ」

「無理」

雄大さんの言葉に短く返したカズキさんは、そのまま私の体をたった今叩き開けたドアの中へと押し込む。

「優しくしてやれよ」

「無理だね」

背中で会話を聞きながらも、目の前に広がる光景は、LvBと同じような倉庫と、一枚の鉄製のドア。

背後でドアが閉まる間際に

「ごめんねサキちゃん」

すまなそうな雄大さんの声が聞こえてきて、何を謝っているんだろうと考えて

きっと私がココに来たことをカズキさんに知らせたのは雄大さんなんだと納得した。

きっと私に飲み物を出してくれたあと、携帯を開いてカズキさんに連絡を入れていたに違いない。

むき出しの蛍光灯が一本だけ灯りを点す空間を無言のカズキさんに腕を引かれたまま通り過ぎる。

鉄製のドアを躊躇なく押し開けたカズキさんに引きずられるようにして入った先は見たことのある景色が広がっていて