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私の頬を両手で包み込み、斜め上から口付けようとする知景。こんな顔をしていたなんて知らなかった。

いつもの上から目線のあの挑発的な顔をしていると、てっきり。

「(……こんな風に、笑うんだ、あいつ)」

困ったように微笑みながら、でも知景は、嬉しそうだった。

私はその写真を見つめ、

「……はい、これにしましょう」

その中でも自分の顔を写っていない写真を指させば、カメラマンさんがふっと笑った。やっぱりここは、知景を見せたい。
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