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「ほら、言ってみ?」「…え、?」何を?首を傾げて、意図のわからないその促し方に戸惑う。「_____助けてって、言っていいよ?」次いで優しいテノールが、私の耳に届いてゆっくりと響く。その言葉にびっくりした私は、まるで何かの魔法にかけられたかのように全く動けなくなってしまった。助けて、って何。何故こんな見ず知らずの彼に、私が助けを求めるのか。「…意味が、分からないです。」何とか口を開いてそう言うと、大袈裟すぎるほどの溜息がすぐそばで聞こえた。「傷ついてるから、泣くんでしょ?」「…身体がちょっとマックスに疲れてるだけです。」「ばかだなあ。」批判してるのか、ただの感想なのか分からない、優しいトーンのまま彼は私にそう言う。「疲れてるのは、"ここ"ね。」そして、私の心臓あたりを細くて長い指が指し示した。「…心が疲れてるのさえ気付かないのは、もう充分重症だから。」「……、」「あったかいお茶でも出すよ?」未だマスクを付けたままの彼はそう言ってぽん、と私の頭を撫でた。さっき会ったばかりなのに。なんで私、この人の優しい声を聞いてるとまた涙が出そうになってるんだろう。身体がもう、疲れ切っている。だけど、心だって同じように充分に疲弊している。「……たすけて、」滲む視界の中で、私は震える声で滑るように自然と言葉にしてしまった。すると目の前の彼はふと笑って。「うん、分かった。おいで。」あまりに軽くそう言って、私の腕を引く優しい温度。そして、未だほのかに漏れる光の方へと誘導された。