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『どうっすか?こういうカメラ持っただけで上手な人に見えません?』

「見える、凄い見える」

あ、涼音さんが表情を崩すの珍しいな。小さく笑う彼女に何故だろう、と考えたところで、その服装に目が行った。

『(…なるほどねえ)』

和泉さんがプレゼントした、ワンピースだ。少しの気恥ずかしさで気持ちが落ち着かないのだろう。根本にある嬉しさが、こうしてふと漏れ出しているのだ。

隣で俺と涼音さんのやり取りを見て微笑む和泉さんも、幸せそう。

俺はカメラマンになりきって、

『じゃあ新婚さん、こっちに目線下さーい』

なんて。

和泉さんはそれにくすくすと笑って、涼音さんの肩を抱き寄せた。

『奥さん可愛く撮ってね』

「うわ、やめてよね」

そう言いながらも笑う涼音さん。俺も笑いながら、静かに、ばれないように、ピントを合わせた。

『はい、こっち向いてー』

ふっと、こっちを2人が向いた瞬間。

パシャリ、と。

『え!』

「あ…」

俺は笑いながら、茫然とする2人に言った。

『良い笑顔、頂きました』

 問45
 》研究者と助手と刹那とは?

その写真を和泉さんは照れもせず教授室に。

涼音さんは何故かピーコックグリーンの辞書に。

俺は手帳に、それぞれ入れたのだった。

2枚目はタイマー機能を使って3人で撮ったというのは、それはまた別の話。

―――研究者と助手の写真は少ないけれど、全てとても幸せそうなのです。
398ページより