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「あたし、強くなって、会いに来るから」

瑠菜の力に干渉しない魔法を使えば、世界の安定性は保てる。理論上は。

今は無理でも、あとから入り口を作ってみせる。

「絶対、絶対会いに来るから、忘れてたらピアス引きちぎる」

「わあ、大将怖い」

タクラはあたしの耳に触れる。

耳に何かがついた。

触れなくても、タクラの石だけの方のピアスだって分かった。

「……いらない。趣味悪い」

「そういうなよ~。大事なものなんですよ~?」

「大事なものなら、なおさら、」

「なおさら、オメーに持っててほしいんだけど、分かんねえ?」

「………」

「これでオメーは俺のことを忘れられねえな」

「なくても忘れない」

ピアスを渡したなんて、チーフに怒られるよ。

それでも、あたしははずさなかった。

この趣味の悪いピアスが、タクラにとってどれだけ大事なものか、分かっていたから。

「あたしを忘れるのはタクラの方だ」

「そうかねえ」

「………」

タクラがもう一度頭を撫でて、そしてピアスのついた耳に触れ、頬に触れた。

「大丈夫だ」

タクラの声は優しかった。

「俺はオメーみたいなガキ、忘れたくても忘れられねえからね」

一筋何かが流れたのは、タクラの胸に隠れて見えなかったので、ノーカウントだ。
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