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数秒ののち、ひるんでいた男が主人に反論する声が聞こえてきた。でも俺はすっかり満ち足りていて、もういいやとイヤフォンを耳から外した。

【誰がなんと言おうと、弟の方は私の左に置いておく】
 だって。言質とったな。

 俺は注文したパフェが来るのをレストランで待つ子どものようにワクワクしながら、デスクに肘をついて頬をのせた。

口角が上がりそうになるのをどうにか堪えながら目を閉じる。

 まぶたの裏で、老いた主人と、その左後ろで永遠に付き従っている自分を想像する。

それは、俺が思い描くいくつかの未来の中でも最高のものだった。

 このままいくとどうやら俺の老後、バラ色になるっぽい。
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