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「ウン、嘘」

「うそ」

清々しい回答に虚をつかれて、腕をまくっていた手が止まった。森山は、ときどき悪戯が成功した子どもみたいに笑う人だ。ちょうど今の笑い方みたいな。

「俺が作るって言ったら、春、こっち来るでしょ」

「はい?」

「俺だけ見といてくださいよ」

「俺だけ見といてください……?」

「ウン、早く帰ってきて、春ちゃんと花金飲みしようと思ってたんだよね」

「うん」

「そうしたら、知らねえ男の写真見て考え込んでるし」

「はい、まあ、はい」

「早くそんな男忘れて、俺に構え」

「なんて横暴な」

「不機嫌なボーイになる」
32ページより