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「月子ん家の部屋番号教えて」341ページより
月子ちゃんが帰ってしばらく、雅がそう言ってきたのは本当に突然だった。
「⋯⋯は?」
「何?お前知ってんじゃないの?」
「知ってるけど⋯⋯どうした急に。もうあの子とは関わらないんじゃねえの?」
「そんなこと言った覚えねえよ。てかはやく」
苛立ちを含んだ音色で言われても、こっちだって意味わかんねえんだ。雅のご機嫌取りをしてやる余裕はない。
けげんな顔をしてるだろう俺に雅はうんざりしながら息をついて、「忘れ物」と手の中のそれを見せてくる。
「⋯⋯なんだこれ」
「だから忘れ物だって。月子が使ってた洗面台のとこに落ちてたんだよ」
「これだけ?」
「そーだよ」
雅が持ってたのは何の変哲もない、ただの黒いヘアピンだった。
⋯⋯これ、女が死ぬほど持ってるやつじゃねえか?