異世界——木造アパート「コーポあした」
コーポあしたの正体は、女の子たちの過去と未来のあいだにある、ほんの一瞬の時間。
コーポあしたという名の現在で、女の子たちは羽を休める。
《コーポあした》の管理人・窓香(まどか)と、オスの三毛猫・ねむい。
時間のはざまに落ちるように、女の子たちはコーポあしたの空き部屋に入居する。
入居は一年間。
家賃は一年間で3万円。敷金礼金、契約はなし。
家賃は退去時に支払う約束をするが、結局、管理人の窓香は3万円を受け取ったことはない。
窓香と一緒に暮らしているオスの三毛猫ねむいは、自分を猫とは思っていない。
その昔、猫が猫と呼ばれるようになる前、猫は【寝高麗(ねこま)】と呼ばれる動物だった。
約五千年前、猫が家畜になる以前のこと。
ねむいは化石になり、その化石が窓香の手に渡り、復元された。
オスの三毛猫はとても少ない。
なぜなら、オスの三毛猫は劣性遺伝のため、ほとんどはメスになってしまうから。
オスの三毛猫は昔から、三日後の天気を予想し、当てるということで、崇拝されていた。
ねむいにも、その能力があった。
悩める女の子を、コーポあしたに呼び寄せるのは、ねむいなのだ。
(ちなみに、窓香の妹の小窓は、どこかで「コーポきのう」の管理人をやっています。)