池川愛は関西公立大学通称ハム大工学部の学生である。大学受験に失敗し、浪人の末入ったハム大に愛着が持てない彼女は、彼氏がいる京大へ大学院からの外部入学を目指していたが彼氏翔平にフラれてしまう。翔平の新しい彼女が、京大に現役で入学した自分と同じ3回生だと知った愛は落胆し、次第に授業にも行かなくなり下宿に引きこもるようになる。
そんな愛が留年寸前で辛うじて進級した直後に配属された研究室は影でブラック研と呼ばれる黒峰教授の B 研だった。B 研では学生間に成績による富豪枠、平民枠、貧民枠と呼ばれるカースト制度が存在しており、貧民枠に割り当てられて、毎日単純作業だけをさせられた愛は研究室を無断欠席するようになる。
もう大学をやめようか… そんな思いを抱えたまま日課となっていた深夜の大学構内猫探索に出かけるとそこで偶然、黒峰研の客員准教授、井森と出会う。自分を叱ることもなく、自暴自棄になっている自分の思いをぶつけても独特の理系的センスで切り替えしてくる井森に興味を持った愛は、井森の部屋を訪ねてから進退を決めようと考える。
部屋を訪れた愛に井森は、人工知能(AI)や機械学習という研究分野の話、この世界にはチートも転生もないけれど、未来の世界を切り開く現代の魔法としてのプログラミングの存在を教える。しかし、井森は京大での助教時代に博士課程の女子学生の指導で苦い思い出があり、黒峰研の方針に従うつもりも学生を指導する情熱を失っていた井森は愛の指導まではできないと告げる。
それでもなんとなく毎日井森の部屋に通う愛。黒峰研のもうひとりの准教授、真田による愛へのセクハラ行為や国際学会への挑戦、井森の京大時代の指導学生である月原桔梗との出会いなどを通して、次第に井森を信頼する愛と研究者としての熱意を取り戻していく井森。 そんな中で、愛は桔梗に教えてもらった AIAI と呼ばれる全国の学部生学生による人工知能の研究大会への参加を決意する。無謀と嘲笑う研究室の先輩や、妬みによる同期の妨害にも負けず、「進化する創作人工知能」をテーマに愛は見事 AIAI 本戦への出場を決めファイナリストの 6 人に残る。その中の 1 人は別れた翔平の彼女、葭ノ浦 奏だった。奏での研究レベル、プレゼン力に驚愕しながらも、自分の中にあった彼女への醜い嫉妬心が消え去っていることに気がついた愛は、迷うことなく最後のプレゼンに挑む。
本作はチートも転生もない現代に生きる等身大のリケジョが、AI とプログラミングの世界で成長する姿を描く青春小説である。