我々が知っている空、それしかない世界にガルダニア島という島がある。
そのガルダニア島は今、大きな戦乱に見舞われていた。
どのような世界、あるいはどのような人々が住まおうが人がいる限り愚行は起こされ、人々の運命を変えてしまう、望まざるか否かを問わずに。
ジャンリュックという青年、ポリーという少女も言うなれば被害者であった。
ジャンリュックは有史以来数えるほどしか確認されていない超越者『トゥルーライカン』だった。人ならざる力を秘めた青年は自身のオリジンについて欲した、自分は何者でどこから来たのか、何故存在しているのかを。そしてそれを求める旅に出るはずだった。
しかしその旅への望みは絶たれる。戦乱に見舞われ変わったのは彼の育った村、マモイ村も同じだったからだ。育ての親や大切な妹、友人たちを放って旅に出られるほど彼の心は乾いていなかった。
こうして自分の心を殺し、村を護る事を選択したジャンリュックだったが、混迷を深める戦乱の中、偶然に村を訪れた冒険者の夫妻から大きな力を与えられることになった。
たとえトゥルーライカンだとしても得られなかった力、それは空を飛ぶ力だった。
小型フライヤー、飛行機はジャンリュックに何でもできる力を与えた。村を護る事も敵を滅ぼすことも、島から出ることも、あるいはこの戦乱を鎮めることさえできる力を。
一方、ポリーという少女は非力で特別な力は持たない少女だった。
彼は戦乱の原因の片割れであるテム王の下、虐げられる哀れな子供たち『アバンダン』の一人だった。戦況の好転しないテム王は自分に従わない都市から子供を連行し、人質にするとともに兵士に仕立て上げた。
親が無事でいてほしければ、親の元に帰りたければ戦え。子供が無事でいてほしければ命令に従え。
そんな脅しの中でポリーは絶望的な戦いに身を置いていた。
ポリーには力はない、だが頭脳はあった。彼女はひたすらに考えた。彼女の友人や大切な人がどうやったら協を生き延びられるかを。
それは彼女を成長させ、仲間の被害を抑えることになっていった。
それに従い善意から手を差し伸べてくれる大人や利用価値を見出した大人が現れ、ポリーは否応なしに戦争の中心に飲み込まれていった。
それでも彼女は考え続けるのだった、仲間を救うために、親の元に帰るという夢をかなえるために。
大国の正義、邪な者たちの蠢動、王たちの愚行、ガルダニア島の混迷が深まっていくにつれポリーとジャンリュックの運命が交差していく、多くの人々の運命を伴って。