推しアイドルに本気で恋をしていた、“ガチ恋”の私。
彼女になることなんて夢のまた夢、と思いつつも、資金のためにデリヘルで身体を売りながら文字通り身を削ってライブに通い、サイリウムを振り続けること10年。
その“推しメン”は今、私と同じ指輪を薬指につけている。
数年前、私の好きになったアイドルは、突然の引退を発表したくさんのファンに惜しまれながらもステージを降りることとなった。もう二度と会えないのだ、と悲しみに暮れながら向かったチェキ会で、彼は私に問う。
「本当の俺を知っても、まだ好きだって言える自信、ある?」
それに頷いた私は“一般人”になった彼と初めてのデートをする。そこで明かされたのは、アイドルを辞めた本当の理由だった。突発性難聴、鬱、統合失調症、牢獄のような入院生活--どんどんと崩れてゆく彼の身体と心に戸惑いつつも、添い遂げることを決め私たちは結婚を決意する。
ファンとアイドルの結婚という事実に、世間の目は当然厳しかった。盗撮や匿名掲示板でのバッシングなど、私たちの味方は世界中どこにもいない。祝福もされず、ただ身を隠すような日々。
それでも私は、どうしてもこの小さなブーケを手に入れたかった。
色褪せた10年前のツーショットを眺めながら、私は今日も精神病棟への面会に向かう。
夢を与える職業だった彼と、夢を見すぎた私の ノンフィクションストーリー。