ライバルがいる、ということ
「飛べない私と 飛ばない君」、その続編「再び飛び立つ瞬間を」では陸上競技、その中でも走り高跳び(ハイジャンプ)をメインテーマにしました。
私自身、アスリートではありませんから、主人公たちを身近に感じたくて色々調べました。
(調べごとをするのは、本当に楽になりました… このネタについてはまた別の機会に)
オリンピックの記録、世界陸上の記録。アジア大会は? 国内の大会は…?
年ごとのメダリストの名前と、その時の記録。単なる数字の羅列が、その後ろにある物語を教えてくれるようで、とても楽しかったです。
その中で見つけたのが、この二人でした。
日本陸上 女子走り高跳び
2000 金 太田 陽子 ミキハウス 1.88 銀 今井 美希 ミズノ 1.80
シドニーオリンピック 女子走り高跳び
2000 金 エレーナ・エレシナ/ロシア 2.01, 銀 ヘストリー・クルーテ/南ア 2.01, 銅 カイサ・ベリークヴィスト/スウェーデン 1.99, 銅 オアナ・パンテリモン/ルーマニア 1.99
*今井 美希 1.92 予選A組 16位 敗退, 太田 陽子 1.94 予選A組 12位 決勝 1.90 11位
"2000年代に入ってから、アジア地区の大会ではメダルを獲った選手もいるけど、オリンピックでフィールドに立てたのはたったの二人だけ"
「飛べない私と 飛ばない君」で主人公の弥生が回想したのが、この二人です。
偶然にも二人は同い年で、高校時代、もしかしたらその前から、ライバル関係にあったのだと思います。大人になって、二人がどんな思いでオリンピックのフィールドに立ったのか… それを考えるだけで胸が熱くなりました。
太田さんがオリンピックで決勝に進出すれば、今井さんが翌年に日本新記録をたたき出すという、本当にドラマティックな関係。
お互いの存在が、競技者としての限界を引き上げる… これはただの想像ですが、オリンピックでの二人の記録を見るとあながち間違ってないかな? とも思ったりして…。
私が描いたお話では、陽菜が事故でアスリートの道を断念し、ライバルだった弥生はひとりで現役を続行することになりました。
太田さんと今井さんの関係は、「もしかしたら、あったかも知れない未来」として、常に頭の片隅にあったように思います。
「飛べない私と 飛ばない君」のラストは、今から15年後くらいの未来をイメージして書いています。
これからその時までの間に、オリンピックのフィールドに立つ女子ハイジャンプの選手が現れたら、「嬉しい間違いだった!」と思って心から応援したいです。
それがライバル関係にある二人なら、なおさら嬉しいかな――。
2020.5.11 黒川亜季
シェア
コメント
ログインするとコメントが投稿できます
まだコメントがありません