森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 7

朝を迎え、少し戸惑っている弓弦に西村は何気に話しかける。

「今日は仕事?これから家に帰るんだろうけど、どうするの?」
「とりあえず、ひかりに連絡れて。家に帰って・・・・。」
「帰らずにここからお店に行けば?」
「でも。」
「いいじゃない、たまには。」
「あたし、やっぱり先輩とは・・・・。」
「気にするな。俺はただ弓弦のそばに居たいだけだ。」
「気持ちはうれしいけど。」
「それだけで俺はいいんだからさ。時間までのんびりここにいてよ。」
「ひかりに電話する。先輩。」
「そうだな。連絡は入れないとな。」

そういうと弓弦はひかりに電話を入れる。少し元気がない声だが。

「おはようひかり。」
「おはよう、また続けてどこに行ってるのよ。お母さんも心配しているよ?」
「すまない。大丈夫、呑みに行った先で帰れなくなってネカフェに入り込んだんだ。」
「また、一応弓弦も女なんだから気を付けないとね。」
「あぁ。」
「ねぇ、弓弦聞いてる?」
「あぁ。」
「まだ眠い?一度帰ってくる?」
「いや、ここで少し寝てからまっすぐ行く。」
「着替えは?」
「店においてあるから大丈夫だよ。」
「んぁ、今日はちゃんと帰ってくるのよ?弓弦。」
「あぁ。」
「お昼は近くで食べるから心配しないで。」
「ごめん。」

そういって携帯を切った。
着替えをどうしようか悩んでいると、西村が自分の服を出してきて
着替えるように言った。来ているものを全部洗濯して乾かせば?と。
乾燥までやるから、全部入れてその間シャワー浴びて自分の服を
来ていれば一時間半もあれば乾くからと。
先輩の言葉に甘えて弓弦は服を借りた。
そしてシャワーを借り湯船につかった。
ちゃんと湯張りをしてくれていたのだ。
肩までつかりふと視線を上げると涙がこぼれた。
こんなに優しくされると自分が自分でなくなっていくような気がして。
上がるとバスタオルが用意してあり、それにくるまって
出ていこうとすると、ドアの外・目の前に西村が立っていた。

「弓弦。大丈夫か?お前顔色悪くないか?」
「そうですか?先輩、それよりもお借りしました。ありがとうございます。」
 
そういうと、西村の横を通り過ぎ着替えに借りたシャツを着るために
部屋に行こうとした。すると後ろから抱きしめられる。
でも、弓弦はその抱きしめられたまま西村に言った。

「先輩の気持ちはすごくうれしいです。
 あたしなんかを女として見てくれて、本当にうれしいです。」
「だったら。」
「だけど・・・・・。」
「あのさ、このマンションはさ俺にとって一人じゃ広いんだよね。」
「?」
「俺の女としてではなく、弓弦が今の場所から独立しないか?」
「えぇ?」
「今はさ親類の家にいるだろう?お前は自分を守るために。」
「・・・・・・・・・・。」
「んじゃなくって、これからの自分のためにここに来ないか?」
「え?」
「俺さ、思うんだ。これからのことを考えたら、
 一度過去から離れてみたらってそう思うんだけど。」
「おばさんとかひかりとかと離れてみるということ?」
「今までそんなことしたことなかっただろう?
 一度、過去に触れてしまうところではなく、全く真白な世界に出てみないか?」
「どうしたら・・・・・・・。」
「俺のこの部屋に一緒に住む。シェアメイトとしてさ。」
「シェアメイト?」
「同居人だ。」
「西村先輩と?」
「男と女での同棲じゃなくって、同居するだけの同居人。」
「お前はそういわないと、返事を考えないだろう?」
「・・・・・・。」
「過去を忘れるために、ここに住むんだ。」
「忘れられる?そう思う?」
「あぁ。弓弦を俺の女にするというのとはまた別だ。
 俺の女というには弓弦の意志がない。
 それよりもすっきり忘れられたら少しでも考えられるように
 なると思うんだが、どうだ?」
「少し考えさせてください。」
「弓弦がどう考えてようと、俺は受け止めることができると
 自分では思っている。自信がある。」
「少し待ってください。まだ混乱してて。」
「あぁ、待つよ。いくらでも待つ。」
「西村さん・・・・・。」

弓弦は混乱していたが、確かに伯母とひかりと一緒に居ては
自分に逃げ道を作って、つらい事や過去から逃げずに戸惑って
ごまかしているだけのようには感じていた。
一日一日をなぁなぁと過ごしているだけかもしれない。
それを先輩は気づいたのかもと。

その日は朝ごはんを一緒に食べ、楽譜に目を通したりしている
西村の横で自分もPCを使ってのカクテルのサイトにチェック入れたり
それぞれの思うことをやっていた。
お昼になり、もうそろそろ準備をしなければと
乾いた自分の服に着替えながら横に居る西村に話しかけた。

「あの先輩。」
「ん?」
「ここに一緒に同居するとして、家賃は?光熱費は?食費も。」
「家賃と光熱費は、弓弦がここにいてくれるそれだけで相殺だ。
 俺がそれで安心していられる代価と同じだから。食費は考えてなかったなぁ。」
「それでいいんですか?あたしは女としての代価はありませんよ?」
「そんなこと気にしていたのか?」
「だって。」
「俺の安心は何物にも変えられないものさ。
 弓弦がそばにいる安心は、何物にも代えがたい現実だ。男と女の代償は二の次だ。」
「西村先輩はどうしてそこまで?」
「弓弦は俺を先輩としか見ていないのだろうけど
 俺にとっては、家族と共に大切な俺の宝物だよ?」
「そう思われて、あたしはどうしていいか。」
「弓弦が泣きたいときに俺がそばに居たいだけ。それだけだから。」
「困ったな。うれしすぎて泣きそう。」
「おいおい、これぐらいで泣くなよ。」

そういって、また泣き出す弓弦が本当に放せなくなる西村だった。
14時になって出勤まであと3時間。
弓弦は買い出しに出かけるといい、きちんと着替えて西村の部屋を後にしようとしていた。
すると西村もそれに付き合うといい、一緒に出てきた。

「パパラッチは大丈夫だと思うが、一緒に出よう。」
「西村先輩大丈夫?」
「出入り口は駐車場とか4,5ヶ所あるし別に住人が出入りするから大丈夫さ。」
「今日は銀座に出ますよ?」
「あぁ、お前は自分の客たちに守られている。
 万が一俺とに写真を撮られたら大泉に連絡を入れろ。
 そうしたら消してくれるさ。」
「大泉のおじさんに?」
「あいつは大の弓弦ファンさ、大切な弓弦の後ろだて。弓弦の味方だ。」
「わかった。」

そういって二人は銀座に出た。
今日の仕事に使う果物や小業ものを仕入れに。

「今日は何を作る予定だ?」
「何を作るかはわからないけど、このチェリーは使えるかな。」
「こっちのキウイは?」
「あぁ、ゴールデンだといいかも。」
「それと、昨日はグレープフルーツを使い切ったから
 ルビーとホワイトと両方。で、グリーンレモンと。」
「いろいろいるんだなぁ。」
「えぇ、それだけあたしのフルーツを使ったカクテルを
 いただいておられるということ。嬉しい事よ。」
「で、次はどこに行くの?」
「業務用のお店。ギムレットも切れたし、ドライジンもベルモットも。
 昨日ウォッカも西村先輩でつい切っちゃったし。」
「弓弦さ、俺がいるから重いものも買ってるだろ?違うか?」
「当たりかも、だっていつもは一人だしさ。」
「ていうか、周りから見ると野郎二人組なんだろうな。」
「そうかも。なんだか、昨日の今日で髪を短くしたいかも。」
「俺はそのままがいいんだけど?」
「短くしたら翔太君にそのままでしょ。いっそのこと双子の翔太君で、
 そうなると西村さんも変な気は起きないでしょう。」
「そうだなぁ。なんだか、まるでホモ達だもんな。」
「翔太君に相談して、真面目に考えようっかな。」
「やめろよ。でも短くしても俺には弓弦は弓弦だけどな。」
「やっぱり駄目かぁ。同居するなら何か考えないとさ。」
「なんでだ?」
「どうしても男と女だから、週刊誌はほぉっておかない?」
「そうだなぁ。」
「翔太君だったらなんで?って感じでごまかせる。」
「弓弦さ、翔太を餌にしようとしてない?」
「でも、先輩と一緒に住むことは無理だと思いますよ?
 それにあたし、今度ひかりんちの離れに移るんです。一人で自由がいいから。」
「やっぱりどうしてもあの部屋には来ないかぁ。」
「えぇ。絶対に無理と。
 でも、自分の中で先輩の胸を借りたいときは遠慮なく甘えますから。」
「あぁ。待ってるよ。すぐにでも借りてくれるといいんだけどな(笑)」
「先輩と話してたら、本当にそう思いました。ちゃんと過去を忘れないと、
 どう転がって生きていこうとも前に進めない気がする。」
「だろ?まず、忘れろ。忘れる努力をしろ。すると人生少し楽になる。」
「ですね。自分の足でしっかりと生きていけるように。」
「これで弓弦の心に一歩はいりこめたか?」
「さぁどうでしょうか。でも・・・・・・」
「でもなんだ?」
「何でもない、なんでもないですよ。気にしないで。」
「そう言われるときになるなぁ・・・・言えよ。」
「無理無理(笑)」
「そういえばさぁ、弓弦。」
「なんですか?」
「今朝の電話の後に携帯にメールが来ててびっくりしたんだけどさ。」
「誰からだったんですか?」
「この間のmartinの・・・・・そうだ、悠太だ。」
「悠太君?」
「あいつバイク転がすだろ?一緒にツーリングに行きましょうってさ。
 行くとき誘ってくださいって、おはようメールが来てたんだ。」
「先輩、アドレス交換してたっけ?」
「あぁ、ちょっと前に局でさ。楽屋に名前が見えたからって
 寄ってくれたんだ。その時に、みんなと交換した。」
「なんだかんだ言っても、好かれてしまう先輩がいる。(笑)」
「弓弦も俺のことは好きなんだろ?」
「先輩としてですね。それから先はわかりません。」
「でも夜の話、あんな大切でデリケートな話。
 普通の関係じゃ話ししてくれないもんな。
 その分俺は誰よりもリードしているのか?」
「どうでしょうねぇ(笑)」
「知ってるのは他にいる?」
「家族とお爺ちゃんとネットつながりの一番仲良しのはなさんだけ。」
「男友達の中ではなししたのは俺だけか。やっぱり弓弦は俺のこと好きなんじゃん。」
「ちょっと違うかな。」
「何が違うのさ、何も違わねぇじゃん。」
「あぁ、あと一人いたなぁ。」
「誰々?誰なのか?そいつが唯一のライバルになるのか?」
「西村さんの足元にも及びません。だって知り合って一週間ぐらいしかたってないし
 強引な人は好きじゃないし。だけど真面目に話をするから
 喋らざろうえなくて。」
「俺の知ってるやつなんだろうなぁ・・・・・。」
「知らない方が幸せですって。」
「あぁ、もう店の前まで来ちまったか。」
「ついちゃった。先輩荷物ありがとう。助かりました(笑)」
「いえいえ、どういたしまして。」

 `turururururururururu turururururururururururu’

「ほら、先輩呼び出されてる。」
「あぁ、すまない。んじゃな、弓弦。またあとで。」
「ありがとう、先輩。」

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