森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 36

「西村さんのプロポーズ受けることにした。」






「おい、今なんて言った?」
「弓弦?お前。」
「はぁ?何言ってるの?弓弦。」
「あ?」







「何度も言わせないで。恥ずかしいから。」
「お前あの西村と結婚するのか?」
「弓弦。お前・・・・・・。」
「伯母ぁ、泣くなよ。そんなに衝撃的なのかよ。」
「あぁ、すごくすごく衝撃が強くて泣いちまったよ。」
「伯父ぃ。あごあご。開いた口がおかしいよ。」
「弓弦。どうするのよ、翔太君も槙村さんも弓弦に本気よ?」
「どうするたって、どうするんだよ。てか、いつの間に来てんだよひかり。」
「あぁあ、貴志たちが悲しむな。人のものだもんな。」
「会社でも大騒ぎになるわ。仕事に支障をきたすわ!
 どうするのよ、いきなりそんなこと口にして!」
「しばらくは内密に。どこからか漏れる情報なんだろうけど
 まだしゃべらないでほしい。だけど、家族にだけは。
 そう思って今日、誠さんまで呼んで話したんだからな。」
「おばさん。」
「なんだい?相原さん、というか。なんだい誠さん。」
「家族ってものがいまいち理解できていない俺が、
 弓弦の家族に混じってこんな重要なことを聞いてていいのか?」
「誠さんは弓弦の父方の少ない血縁だ。しっかりしないとね、誠さん。」
「いろいろここで詰め込まれておかしくなりそうだな(笑)」
「でも、誠さん。あなたにはここにも家族がいると
 あたしという妹がいるとわかったんだ、一人じゃないってことさ。
 でもお父さんは黙ってなくってもいいのに(笑)」
「そうなのかなぁ。」
「でも、家族とわかって安心した?」
「そうだなぁ。て言うか、お前の話からどうして俺の話なんだ?」
「なんでだろうなぁ。でも、今日は幸せな夜を迎えられる。
 そしてすっきりした。話せる家族がいてあたしすっきりした。これで寝れる。」
「俺はどうしたらいいんだ?」
「泊まってけば?伯母ぁ、布団あるでしょう?」
「んだねぇ、遠慮しないで泊まってお行き。
 離れが空くから、そこに住んでもいいよ。誰かいたほうが安心だしね。」
「今の部屋が一人の空間で居心地良いしな。でも、家族と一緒というのも悪くないか?」
「誠さんの気持ちに正直にいいさ。とりあえず、あの離れから引っ越すかも。」
「西村さんがお前を離さないんだろ?すぐにでも引っ越して来いって。」
「それは前から言われているんだけど、
 あの離れ居心地良くて逆に引っ越してこないって聞きたい方かも。」
「西村さんにはそう話したの?」
「してない。できないもん。あの部屋気に入ってるみたいだし。」
「でも話してみれば?」
「ひかり?ひかりどうしたんだい?」
「こんな内緒話してて明日どうしよう。」
「ひかりはすぐ喋っちまうからなぁ。」
「ひかり、明日は休め。風邪ひいたか熱出たか、なんでもいいから
 明日休め(笑)弓弦が困る。落ち着くまで休め。」
「えー仕事休むのは嫌だっ!」
「あははははは。ひかり頼むよ。喋るな。」

その夜は賑やかに過ぎて行った。遅くに弓弦は離れに戻り
誠はひかりの隣にあった弓弦の部屋に。
誠はまだ弓弦が話をした事が信じられなくて、眠れずにいた。
チャリコンが終わって時間ができたら、もう一度弓弦に話を聞き
そのお爺ちゃんとやらに会わせてもらおうと。
血のつながりを確かめるんじゃない、話がしたいと。
一方弓弦は、自分の部屋に戻ると西村に電話をした。

「あの。」
「なんだ?弓弦、いつもの弓弦じゃないじゃん。」
「だって、昨日の今日で今晩で。」
「どうしたんだ?明日の朝の事か?気になって寝れない?」
「あのさ、ひかりや伯父伯母には隠せないんで話した。」
「結婚の話?」
「あぁ。誠さんにも。」
「隠せないもんな、弓弦は正直だから。いいんじゃない?」
「今どこにいるの?」
「今?まだ事務所。そのまま明日銀座かな。」
「明日も一緒なんだよね。」
「なんで今更そういう風なこと聞くのさ。」
「ねぇ。」
「なに。」
「明日のステージで、言わないでよ?パニックになってしまうし。」
「俺は言いたいけど。言っちゃだめ?」
「駄目に決まってる。」
「なぁ、事務所でようかな、そっちに帰っていい?」
「良いけど・・・・・。でも・・・・・。」
「んじゃそっちに帰る。」

西村は一人の部屋じゃなく、弓弦と二人の部屋に帰りたかった。
事務所を出るとまっすぐに弓弦の家に向かった。夜も23時をまわった都内。
スムーズに弓弦のうちまで帰りつけた。

「ただいま。」
「おかえりなさい」
「なぁ、明日大丈夫か?緊張しているだろ?」
「別に、大丈夫。」
「無理するなよ、全然いつもの弓弦じゃないじゃん。」
「あのさ。」
「なに。」
「話したことを今考えると、なんだかさ。」
「今更何さ。」
「西村さん。」
「西村さんて呼ぶな。あなたとかいろいろと・・・・。」
「そういうんじゃなくって・・・・・。」
「んじゃなに。」
「結婚。本当に?あたし?」
「俺はお前に決めたんだ。弓弦は俺の弓弦だ。」

西村は、黙った弓弦を抱きしめる。そのまま抱きしめたままソファに沈み込んだ。
kissをしながら、抱きしめそのまま夜を過ごし、朝を迎える。

「おはよう。」
「おはよう、朝ごはんで来てるけどご飯でよかった?」
「おぅ、弓弦の飯か。こういうのは初めてかな?」
「初めて作ったかも。ひかりの弁当とか、休みのときは
 あたしが夕飯の準備してみんなで食べるけど。」
「うちに来てても、俺が作ってたしな。客人には作らせないし。」
「そうそう、そのまま客人のほうが気楽でよかったかな。」
「俺は弓弦が受け入れて、結婚を承諾してくれたそれだけで
 幸せなんだけど?そういうのはだめなのか?」
「どうなんだろうね。(笑)さぁ座って。ご飯ごはん。」
「あたしは昔から昆布だしの白みそだけどそれでよかった?」
「あぁ、こっちの合わせはしょっぱいからなぁ。弓弦もそう思わない?」
「そうね、こっちに来てかなり慣れたつもりだけどしょっぱいのには慣れないなぁ。」
「同じ場所で育ったから、弓弦の作るものが安心して食べれるよ。」
「そう言ってもらえるとうれしいかな。」
「めしの炊き方も、一つ一つ俺に合わせたように考えてあるようで
 一番それがうれしいかも。めしが進むよ。」
「褒めてもだめです(笑)早く食べて出かけないと。」
「そうだそうだ。早くいかないと一番目は俺たちだ。」


あわててご飯を食べると着替えて二人家を後にした。
衣装は`mask´に預けてあるしと、二人は店に向かう。
行くと既に店の鍵が開いていた。ほかの4人も落ち着かないまま朝を迎え
早くからきていたのだ。

「おはっ。」
「あぁ、弓弦。すまん、お前寝てるって思って起こさずに先に来た。」
「あぁ、いいんだ。それよりも5人ではラストステージだから
 誠さんや貴志はまだ来るの早いんじゃない?」
「俺は寝れなかったっすよ。寝れなくて早く来て合わせてた。
 弓弦さんは西村さんと最後のリハだろ?」
「そうなんだけど、誠さんいるし貴志いるし・・・・・。」
「遠慮しないでやれよ。大丈夫(笑)」
「あと3時間しかないぞ、リハさせてもらえるならちょっと合わせよう。」
「俺ら、ちょっと役得?」
「ですね、誠さん。」

店の真ん中に陣取り、まずはで合わせる。
さすがに西村さんと弓弦はここ数年一緒に仕事しているのか
誠と貴志には出来上がっているように聞こえた。
しかし完璧が大好きな弓弦は、自分の音程に納得がいかないのか
西村に何度も弓弦が気になるところを歌わせそれに合わせる。
西村も嫌な顔もせずに、合わせようとする弓弦に付き合う。
誠は、つい昨日の夜弓弦が話したことを思い出した。
重要でかつ大切なことを。自分が弓弦と兄弟関係にあり
西村と弓弦が結婚すれば自分もその家族の中に入ることも。
今日が終わり、明日から忙しくなる店をみんなで頑張らないといけないのに
その中も、弓弦の結婚があり引っ越しがありTVが騒いで落ち着くまでは時間がかかりそうだ。
自分の親のこともある。
これも弓弦がからんでいるために弓弦と一緒に動かねばならないし、
本当にお爺ちゃんにあたる弓弦の爺さんに話をきちんと聞く時間も
間に入って作ってもらわなきゃいけない。
誠は自分のこれからをどうしたらいいんだと悩むこととなる。
西村と弓弦の声を聴きながらも、どっか違うことを考えている風な誠を
貴志は見逃さなかった。

「誠さん。」
「んぁ?」
「どうしたんですか?そんなに弓弦さんが好きなんですか?(笑)」
「だな。大好きさ、大好きで愛していてあれが焼けるな(笑)」
「ほんとっすか?でも、誠さんがライバルだと俺負けちゃいますよ。」
「おや?貴志も弓弦が気になってんのか?」
「俺っすか?俺、ここに来た時から弓弦さんが大好きですよ?
 誰にでも聞かれたらそう答えてますもん。」
「愛しているということか?」
「ぞっこんですね(笑)弓弦さんが俺の前で女を見せたら
 きっとかぶりつきますよ(笑)」
「多分これから先それはできないな。」
「なんでです?」
「弓弦はお前をライバル視しているからさ。」
「それは仕事上でしょ?」
「どうかな。でも、弓弦にここ一年で動きがあるぞ、見てな。」
「誠さんは何か知ってるんですか?」
「少し話を聞かされたが、どうなるかはわからん。」
「誠さん、振られたのか?」
「いや、ちと違うな。でもたぶんみんな振られる。」
「そういう嫌な予言はしないでくださいよ(笑)」
「まぁ、本人が言うだろう。それまで俺は何も言わねぇ。」
「なんだか意味深だな。」
「西村さん。弓弦。大丈夫なんじゃないんですか?それでOKでしょ。」
「そう?誠さんこれで大丈夫かな。」
「西村さんも着替えなきゃいけないでしょう?」
「あぁ。更衣室はあっちを借りていいのか?」
「おはようございます!」
「あっ!おはようございます。薫さん。」
「今日はきれいになってもらいますよ?手加減せずにきっちりとやりますね。」
「なんだか怖いなぁ、あの時も翔太だったし。」
「今日は短く切る前の弓弦さんの髪の長さを取り戻します。
 あの髪にいちばん近いウィッグを持ってきたのよ。」
「えぇ、あの面倒な髪型に戻すの?」
「だってあれが弓弦さんじゃない。あの時は切るのがもったいなくって
 本当に切った後は後悔したわ。」
「でも切りがいがあったでしょ。あれだけの量だもの。」
「だから、今日は西村さんの相棒で上がるんでしょ?
 そしてラスト`mask´の代表としても。」
「うん。でも、何を着るのかまだ見せてもらってないけど
 それに合わせた衣装だよねぇ?」
「見る?」
「あぁ。んじゃ部屋に。」

薫と弓弦はにやにやしている西村達を気にも留めずに部屋に移動した。
ドア越しに弓弦のすごい声が聞こえた。その瞬間西村達が大笑い。

「薫さん!これ!これなに!あたしに???」
「そんな喜ばなくたって!でも。アハハハハハハハ(笑)」

 `バン´ 大きくドアを蹴り開ける弓弦。

「西村さん!これ!これ!どういう事さ!」
「弓弦、お前顔が・・・・真っ赤だぞ。」
「当たり前じゃん!こんな・・・・こんな・・・・・・・。」
「誠さんあのドレス・・・・。弓弦さんにぴったりじゃん。」
「あぁ、貴志。そう意味さ。お前振られたんだ。」
「まじで?」
「大真面目。だけど誰にもその意味を言うなよ。
 お前以外でもショック受けて沈むやつでるから。
 まぁお前はショックだろうけど沈まない人種だしな。」
「いや。沈む。沈没する。あんなの見せられて他人の物だなんて。」
「貴志、あとで呑みにこうな(笑)」
「ねぇ、西村さんまるでこれウェディングドレスじゃん。頭いたぁい(汗)」
「似合うじゃん。お前足がきれいだしひざ上20㎝でも
 全然ドレスに見えるじゃん。」
「これ女丸出しじゃん。」
「いや、俺と一緒に上がるときは女の弓弦でないと
 おかしいだろ?思いっきり化けてくれ(笑)」
「アカペラとピアノだぞ?あたしの担当。それにこの衣装は
 ちょっとやり過ぎじゃん。」
「いや、それで上がってもらうからな。
 発表はしないが、そういう雰囲気を醸し出させてもらった。
 他のやつらに手を出すなと警告だ。」
「もしや誠さん!ラストの`mask´の衣装は?」
「あぁ、俺もちゃんと頼んでおいたさ5人のステージだ。
 派手に行くぞと思ってかっこよく決められる衣装さ。」
「どんなのさ。まさか踊るのに邪魔なのじゃないだろうな?」
「いやいや。そこのロッカーに入れてあるだろ?」
「見たらショック受けちゃう?」
「見ない方がいいな、多分(笑)とりあえず薫さんとやら。」
「はい、相原さんどうしましょう?(笑)」
「あと1時間ないぐらいでステージだ。西村さんとのステージなんだから
 気合い入れて弓弦を女にしてくれ。とびっきりの上玉に。
 マスコミも集まってるらしい、西村がチャリコンで出るという話は
 すぐに広まったらしいからな。TVも来てるらしいんだ。」
「そうそう、集まってるんだから男の弓弦じゃ困るんだな。
 しっかりとステージ映えする弓弦でないとさ。
 しっかりと化けて来い、弓弦。お前を自慢したステージにしたい。」
「まさかばらさないでしょうね?駄目よ?まだ今は。」
「しないさ。しないけど、俺の物と雰囲気で伝えたいな(笑)」
「まったく。」

衣装に着替えメイクする弓弦。薫さんも気合入れて弓弦に手を入れる。
久しぶりに化粧する弓弦。化粧乗りが悪いでしょうと薫さんと話しているのが聞こえる。
一方西村も、弓弦に合わせて真白いタキシードに着替えた。
バラードを歌うため、男と女の歌を歌うためそれに似合うタキシードとして選んだもの。
そして弓弦のドレスに合わせた真白いタキシード。
まるで並ぶとウェディングみたいに見える。しっとりとした衣装。
あと15分と言う所で部屋を出てきた弓弦。

「お前、さっきまでかぶってた翔太顔はどこに隠した?」
「まだ鏡見てないんだけど、誰か鏡みせてさ。」
「見たい?あっちに姿見あるじゃん。」






「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!なにこれっ!」







「あはははははははは」
「ぎゃははははは、お前。お前その声なんだっ(笑)」
「だって!だって!あたし女じゃん!」
「いや、似合ってるって。そう驚くなさ。大丈夫。」
「ちゃんと俺のステージなんだから、それで頑張れよ?」
「何か仕組んでない?」
「あぁ、きっちりと仕組まれてるさ。」
「弓弦、似合ってる。すごく似合ってるって。
 これ選んだ西村さんはきちんとお前のことを見てるんだ。」
「時間よ!これを羽織ってステージに行って!」




騙されたように衣装を着せられた弓弦。見えないように上からは織物をかけられ
同じくは織物を着せられた西村と一緒にステージに向かう。
弓弦はウィッグをつけ、短く切る前の髪型。腰までの巻き毛にされ
薄い桃色の衣装を着させられている。
背中ががっつりあいて白くしなやかな腰まで見えている。
腰から下は裾まで、たっぷりのレースが使われている。
甘くてかっこ可愛い感じの若者が着る衣装だ。
弓弦が初めて着る衣装。それも桃色。薄い色とはいえ、白く見えるとはいえ桃色。
弓弦はそれだけで意気消沈していたのだ。
そして西村も。白いタキシードとはいえ、弓弦と同じ薄い桃色のネクタイ。
それに上着のポケットには桃色のチーフが。

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