森尾月子

もりおつきこ

何気におばちゃんです。
今まで書いてきた書き物を残したくて登録しましたが
どうしたらよいかわからず、
別サイトより手直ししながらUPしています。
妄想ものです。夢物語です。

YUZURU 80

 `槙村さん。

 メールをありがとう。
 記者会見なんて今後一切面倒だから断ろうかとも思いましたよ。
 突っ込まれるしでも大学の友人がその中にいて助けてくれて
 そしてあたしよりも立派な社会人でいてくれてそれがうれしかった。
 でも、西村さんと婚約をすると公表したので
 二人っきりでのデートはあきらめてくださいね?
 でも、他の誰よりも一番頼りにしていますから。
 そして秋山さんたちのK'sbrotherのアルバム。
 まだ詳しいことはわからないのだけど、歌うのか演奏するのかは
 わからないのよね。どうなるのかはこれからよ。
 それと槙村さんの所の仕事もあるの?
 これからどうなってくんだろう、少し不安かな。
 でも二人っきりじゃないみたいだね。ちょうど翔太君が長崎に行きたいって
 そう言ってたから悠太君か翔太君どちらかで決めるんなら
 翔太君がいいんじゃない?
 詳しい企画はできているのであればPCのアドレスね。
 これに送ってくれるといいかも。
 でもあたし、そういうの見ると口出ししちゃうかもよ?(笑)

 あたしのアドレスは yuzuru0314@hotmail.com よ。

そう書いたメールを槙村の携帯に送った。送ったのはもう22時をまわっていた。
大まかな企画を決めている段階だろうから、その大まかな企画だけを
教えてくれるのだろうとそう思っていた。

「どんな企画なんだろうね。」
「二人でぶらり旅みたいなものではなさそうだし、
 どうなるんだろうね。でも楽しそうじゃん。」
「でも、そんなに仕事入れられちゃうとカウンターに立つ時間が少なくなってしまうなぁ。」
「まぁ、秋山さんの所のアルバムだな。問題は。
 弓弦の歌声に惚れたんだなぁ・・・・秋山さんは。」
「目の前で歌っちゃったからなぁ。」
「沖縄で?」
「Martinの練習しているときにさ、きちんと踊りながら歌うのに
 どれだけ歌えるのかって発声練習からさせられちゃってさ。」
「どんなふうに?」
「一人一人ピアノの前に立たされてさ、あーあーあーあーあーとか
 音程を確かめさせられてたらさ、俊哉がさばらすんだ。」
「なにを?」
「いつだったっけな、オーナーの誕生日を祝うのにオーナーが
 あたしにリクエストした曲があって、それ歌ったんだけど。」
「へぇ、弾き語り?それともアカペラ?」
「弾き語りでだよ。んで、その曲もあたしが好きな曲だったから
 ついつい掃除している時とか機嫌がいいと口ずさんでたりしてたのを
 俊哉がそういえばって喋っちまったんだ。」
「なに歌わせられたんだ?」
「desperadoだった。それも大川さんにギター持たせられちゃってさ。」
「俺も聞きたいな、それを。俺にも子守唄みたいに歌ってくれよ。」
「誰もいない所でね。恥ずかしいし。」
「俺だけのためっていうのいいなぁ。」
「病院だと歌えないね。」
「明日があるじゃないか。早く寝よう。楽しみだなぁ(笑)」
「誰かいたら歌わないよ?」
「わかってるって。二人の時に歌ってくれるとそれでいい。」

まだ、起きている二人。
TVのニュースをチェックしている西村とPCのメールを確認しながら
返信をする弓弦と。すると、西村がつぶやく。

「おい、フランスのバイオリニスト。フランシス・レノ っていたじゃん。
 亡くなったらしいぞ。」
「うそ。その人のコンサート大分前だけど行ったことあるんだよね。
 かなり酔いしれる演奏をする人でさ。兄さんが俳優なんだよね。」
「そうなんだ。病気だったらしいぞ、病名は伏せてあるが。
 その奥さんは日本人なんだって。」
「へぇ。知らなかった、どこの人だろう。きっと、記者たちに囲まれて
 大変な目に合ってるんだろうなぁ。」
「気の毒だなぁ。あ、言ってる。奥さんは日本人だぞ、へぇ。でも大変だなぁ。」




 《世界的バイオリニスト フランシス・レノは日本時間12月3日午前3時
  パリ郊外の病院で白血病のために闘病生活3ヶ月ののち
  息を引き取られたことが発表されました。
  フランシス・レノは俳優ジャニス・レノの弟であり、
  名器1727年の作者は不明なのですがストラディバリウスを所持。
  これは世界に5本しかないと言われているもので、奥さまのお手元にあると
  そう言われています。
  また兄弟二人しかいないレノ家ですが、もともと侯爵家のために
  パリ郊外にある城を兄ジャニスが、そのほかを奥さまが引き継がれると
  発表されました。
  奥さまは先月よりコンサートで国内に滞在されていたのですが
  コンサートを中止とし急遽日本よりフランスに渡られ今はパリ市内にて
  ジャニス・レノと埋葬の準備をされている模様。
  そのあと帰国するということなので、帰国後国内でも何らかの
  記者会見が行われると思われています。》



「大変だなぁ。有名な人を伴侶に迎えると、亡くなった時が大変なんだ。
 この人も大変だ。悲しむ時間もなかなか与えてもらえない。」
「あたしだってそうなるのよ?万が一、そういうことになれば
 いなくなったショックの上にさらに記者たちから追い詰めらてる
 ストレスできっとあたしおかしくなってしまうよ。」
「いやいや、逆に弓弦がいなくなっても同じさ。」
「でもさぁ、こういう人たちって遺産とかでもめるんだろうなぁ。
 なんだか亡くなった人もかわいそう。」
「だけど。だけどさ、愛しい人のためにその人が不自由しないぐらいに
 一生懸命その人に何かを残そうとしているとしたら
 残された人はその愛情で生きていけるんだよな。」
「そうだなぁ。そこまで愛されていると本当に幸せだよね。」
「さぁ、寝ないと明日はきっと楽しいぞ。」
「明日は渡辺さんが来るのよね。着替えておかないと。」
「明日家に行ったときに、弓弦の着替えも少し持ってきておかないとなぁ。」
「ここにあるものと入れ替えておかないと。」
「だな。クリーニングに出すものと洗濯するものと分けておいて。」
「伯母ぁにいつもやってもらっててさ、申し訳ないんだけど。」
「でもそれはそれ。退院してからおばさんに何かしてあげればいいじゃん。」
「そうだね。そうしよう。眠くなってきた、眠くない?」
「そうだな。まぁとりあえず、休もう。お休み、消すよ?」
「おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。」




その日は雨の音が窓の外からたたきつけるようにしていた。
記者会見の緊張した疲れもあったのか、二人とも寝息を立てて休んだ。




 `tititititititi  tititititititititi´



目覚ましが鳴る。




「おはよう。」
「おはよう。」
「何時?えっと・・・・・6時半。」
「何時に来るって言ってたっけ?」
「8時だったと思うけど。」
「とりあえず、看護師さんに起きたって伝えてくる。
 外出許可もらわなきゃ。先生にも診察はって聞かなきゃ。」
「そうだな、弓弦自分で行けるか?」
「大丈夫。」

そう言って弓弦は一人松葉づえで部屋を出て行った。
その間、西村は電話を入れる。もちろん山田にだ。

「おはよう、山田起きてたか?」
「おはようございます。まささん。」
「お前今事務所か?」
「もう少ししたら行きますけど。」
「渡辺は?」
「いますよ?かわりますか?」
「あぁ。頼む。」
「(弓弦さんの執事っ!まささんがかわってって!)
 はい、執事渡辺です(笑)おはようございます。」
「おいおい(笑)自分で言っちゃぁ(笑)」
「いえ、結構執事渡辺これ気に入っていますから。」
「そう真面目に答えるなよ(笑)」
「それはそうとまささん。なんですか?こんなに早く。まだ7時ですよ?」
「いまさ、弓弦が起きて先生の途ことに外出許可をだしに行ったが
 朝食の後診察が入るから、お前が8時に来てもすぐには動けないぞ。」
「それでも8時にはそっちに行きます。何があるかわからないし
 動けるようだったら、すぐにでもって思ってます。
 駐車場も早くにいっぱいになるでしょう?」
「そうだなぁ。それもそうだな。」
「では、もう少ししたら事務所を出ますね。またあとで。」
「あぁ、またあとでな。」

「ただいま。」
「おかえり、どうだった?」
「外出許可はいいよって言われたけど、朝ごはん前に診察だって。」
「んじゃ行ってくれば?待ってるよ。」
「すぐみたいだから行ってくるね。」
「あぁ。」

診察に向かって言った弓弦。西村は、何気にTVを付けた。
すると、昨日話をしていたフランスのバイオリニストの何だっけ。
そうそうフランシス・レノの話だと思いだしそれを見ていた。
昨晩は詳しいことはと言って、話が途切れてたぶんがまた情報が入ったのか
特集とかがまたあっている。
よくよく見ていると、原田氏のコメントが出ているじゃないか。
西村はびっくりして、TVに食い入るようにそれを見ていた。

 `昨晩発表されたバイオリニスト:フランシス・レノの葬儀ですが明日パリ郊外の
 フランシス・レノの自宅である古城シャノン城にて行われることとなりました。
 参列する方々は、本日シャノン城にお集まりになる予定ですが
 まだ奥様である〈はな・月城〉は体調が思わしくなくジャニス・レノが
 付き添っている模様です。
 また、葬儀の後はなさんとジャニス・レノさんと二人そろって
 弁護士立会いの下、遺言状が公開される予定となっております。
 ただ、わかっていることは昨晩の情報の中にあったように
 シャノン城はジャニス・レノ氏へ。その他のフランシス・レノの財産は
 すべてはな・月城さんへと残されるという話ですが、どうなるかは
 この話し合いで決まると言われています。
 世界に5本しかない名器1727年製のストラディバリウスが誰の手に渡るかは
 この時にこの二人の話し合いで決まると思われます。´

何度も同じことを話すアナウンサーたち。
新しい情報を知りたいのになぁと、まだまだTVを見ている。

次にTVの画面に出てきたのは原田氏だ。

 `昨晩のフランシス・レノ のニュースが飛び込んできたことで原田一郎氏へ
  インタビューを申し込んだところコメントをいただきました。

  それでは、どうぞ。




 世界の宝であるフランシス・レノが亡くなったことは大変悲しいことです。
 ご冥福をお祈りするとともに、哀悼の意を。
 このフランシス・レノはこの日本に何度も来日され、公演をし国内でも
 このフランシス・レノのファンは多いと思います。国内の映画の中でも
 よく使われていたフランシス・レノ曲は皆さんも耳に残っているとは思いますが
 この沢山のなじみのある曲を生で聞くことができなくなったことが
 どんなに悲しい事か。
 何度も来日して講演をしていた時に知り合った女性と結婚されて
 仲睦まじく過ごされていたことはよく聞かされていましたよ。
 奥さまの奏でる音楽をこよなく愛され自分の音と共に聞く人々を魅了していた。
 国内では、奥さまは打楽器奏者としても名をはせた月城はなさんですが
 フランスではご主人と共にバイオリニストとしても名前を知られた方です。
 フランシス・レノがなくなった今帰国されるのかどうかが気になりますが
 落ち込まずこれまでより一層の音を聞かせていただきたいと願っております。´


奥さんは日本の方だったんだ。でもなんだか聞いたことのある名前だと
そう西村は考え事をしていた。そのうち話題は次のニュースに変わった。

「ただいま。早かったでしょう?」
「あぁ、どうだった?」
「松葉づえで行くのはだめだって。きちんと無理をしないように
 骨折箇所が不安定なままだから車いすでと言われた。」
「そりゃそうだよな。まだまだ治るはずないもんな。」
「でももう一か月たつんだぞ。かなり楽ではあるけれどな。
 立てないわけじゃないんだろうけどな・・・・・。」
「あのさぁ。」
「なに?どうしたの?そんなに真顔で。」
「今さぁ、昨日のフランシス・レノのニュースやってたんだよね。」
「昨日の今日だもんね。」
「奥さまの名前月城はなっていうんだって。」
「そうなんだ。」
「月城はなさんっていうんだって・・・・・・。」
「ん。」
「聞いたことある名前って思わないか?」
「そりゃ、有名な人の奥さまですもの外国人の嫁をもらえば
 すごく話題になるだろうしニュースにもなるからどこかで聞いたことあるでしょう?」
「でさ、そのニュースにコメントを出してたのはさお前のお爺さんだぞ?」
「へ?」
「時間があるときにでも原田氏に聞いてみなよ。」
「そうなんだぁ。」
「おはようございます、まささん弓弦さん。」
「あぁ、おはよう。」
「おはようございます。」
「どうですか?今日は予定通り外出できますか?」
「えぇ、大丈夫よ。」
「あちらでの取材の打ち合わせもあるので、移動しましょうか。」
「そうだね、早めに行っておこうかな。」

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