愚図

死と辺と



今から行ってもいい?
日付が変わる少し前。
髪も顔も酷いのに、嬉しくて甘受してしまう。
今週は会えないと言っていたのに。ずるい。

運転をしようと思うからどうせならそっちまで行こうかなんて言って深夜の海岸線を走って会いに来る。
私がどんなに喜んでいるか君には分からないでしょう。
尻尾をぶんぶん振って、嬉しくて仕方のない私は、だけど嬉しいだの会いたかっただのという言葉も口に出来ず立ち尽くす。
本当は走って駆け寄って抱きついて、匂いを嗅いでマーキングしたい気持ちを押さえ付ける。


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人気のないコンビニの駐車場で身を預けながら二時間半。
休憩に入ってしまえば抱き合える程の時間を、でもそうとはせずに過ごす。
温かくて柔らかくて気持ちが良い君の隣。
他の誰かではなく君なのだ、ということに少なからずきっと優越感を抱いているのだろうとは思う。
選ばれたのは自分なのだ、と思うのだろうか。
上手くやっていく方法を考えてくれることは安心感を覚えて、それでもやっぱり似ているらしい私たちはいつかどこかで分からなくなってしまうのかもしれない。
ノーガードで殴り合う、経験だなんて言うけれどこんなもの何度経験しても身には付かない。
君の何かに触れたのならば、今夜は及第点で充分満たされた夜だった。
可愛いことばかり言う君の甘い匂いをいっぱいに吸い込んで、やっと呼吸が出来た、と思うのだ。



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