愚図

不足分


仕事に支障が出ているのだ、と思った。
本来であればしないようなことだとも。
でも本当にそうだろうか?
言い訳にもならない。
君が小さく失望していることに気付いてしまう。


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強請った癖に二週間振りのセックスは上手くいかなくて、ちっとも気持ちよくなかった。
きちんと触れ合っている筈なのに、馬鹿馬鹿しい程嘘臭い喘ぎ声ばかりが聞こえて物悲しくなる。
君の目にはどう映っただろうか。
惰性に思えるセックスになってしまったことにがっかりして、スイッチの切れた白い顔を見ながら微睡んでいるうちに眠っていた。
こんなんじゃないのに、と思う。
本当は全然、こんなんじゃないのに。

はだかんぼうを恥ずかしがらないこのひとが好きで、湯船に浸かりながら白い光を眺める私にお湯をかけてくれながらお話しをしてくれるこのひとが好きで、いいのよ、と言ってくれるこのひとが好きで、だけどなんだか全部あのひとみたいに思ってしまうことが悲しかった。
あのひとよりもよっぽど優しくしてくれるこのひとの、あのひとと違うところまで。
そうして同時に、全部嘘みたいに思ってしまうことがとても嫌だった。

こうしてまた少しずつなにかがだめになってしまうことを、何をどうやったって変えられないのだ。
私がどんなに変わるまいと歯を食いしばっても、必ず終わりが来る。
愛してやまない大嫌いな夏が日を追う毎に暑くなって、君と行こうと話すモネの池も四日市のコンビナートも、どこかの遠い場所の物語みたいになってしまうのだ。



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