愚図

ganache.


不調に眉を顰めながら煙草を吸う。
一層無意識に詰め込むばかりで過ごしている日々、それでも君と見た掛川の朝やモネの池や透明な河は本当に美しかったし、どうしてもと食べたがった鮎の塩焼きや人のいない寂しい四日市コンビナート、深夜のラーメン屋、昼間と打って変わって車通りの少ない幹線道路、仄明るい温泉の、湯が落ちる音。
当たり前にテレビを眺めながら飲むお酒は夢のように美味しくて、だだっ広いベッドはとても良く眠れた。
即席の記念日は概ね私の機嫌を良くしたし、誕生日だのまた来年だの次の旅行の話だのと、上機嫌らしい君の白い顔を眺めながら幸福だった。

馬鹿みたいに晴れた夏のこの一日に、よく知りもしないこの街で、隣にいてくれて良かった、と思った。


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生理が来ないことに少なからず怯えているだろうか、と考える。
君の話す覚悟とやらを心配しながら、このまま何もなかったら一体どうするべきなのかと眠れずにくさくさしている。
中途半端に痛む乳房や子宮は何を考えているのか、海から帰った昨日の夜、碌に返信が来なかったことをほんの少し気にしている。
明日になれば、明後日になればと言い聞かせてはみるものの、何の役にもたたないのだ。

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こまいぬ、とただ一言だけ寄越したあの人に、なんの返信もせずにいること。
隣にいるはずの君はどこかへ行ってしまって、ひとりきりであのひとを思うこと。


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