悪代官に恋をして ~優しい顔には裏がある~

作者藤井更紗

主人公、葵には恋い焦がれる人がいる。
その名は螢沢玄尚。葵より一回り以上年嵩の時代劇俳優兼、悪代官(役)の男性である。
悪役ながらも素顔は穏やかで優しい紳士の螢沢は、殺陣技が未熟な葵にもいつも優しい。
それは自分を気遣い「練習に付き合う」とまで言ってくれるほどで。
けれどその練習途中、突然螢沢が妖…

「ええいっ! ならば貴様らの口を封じるまでのこと! であえ! であえ―――っ!」

 ああ今日もあの人の声が、場に響き渡る。

 重く、低く。

 心地よい艶のある低音は、年齢を重ねた渋みがありありと滲み出て。

 最後には必ず討たれてしまうあの方に、私は今日も恋焦がれる。