普通、あそこまで散々な扱いを受ければ、学校に行くのが辛くなるだろうけれど、意外と二人は気にしていない様子で、寧ろこちらの笑いを誘ってくれる楽観的な始まり方だった。テンポの良い二人の会話に惹きつけられたみたいに、ある意味憑りつかれたみたいに、一心にページを捲っていました。どこか人生というか世の中を達観している二人だからこそ、人目を憚らず、好きなものは好き、いらないものはいらない、という感じに、小さくて大事な世界を創り上げる技があったのだとは思う。その "唯一無二" だとか "二人だけの世界" というものに強く憧れました。
 もちろん、人は独りだと弱いのはわかっている。二人もきっと、 "二人" だからこそ、なんともないように楽しい時間を過ごせたのだと感じる。でも、たとえ居づらい組織にいても、考え方を少しだけ変えると、その辛さも少しはマシになるんだ、と気づき、昔の自分に教えてあげたかったな、と思いました。
 一人だと私たちはやっぱり孤独。でも人間関係に嫌気がさした時、隣にかけがえのない誰かがいてくれれば良いなと思う矛盾がある。小さな世界でかけがえのない人。この人しかいらない。そう思える人に出会えるって奇跡なんだと感じています。彼らの巡り合わせは必然に思えてならない。恋愛というものを超えた絆にまたまた羨ましさが募りました。
 私の理想が全部詰まった本作品に一目惚れをするのはあっという間のことでした。春川と水瀬ちゃんのやり取りやツンデレ感、色んな場面でのギャップが堪らなく好きで好きで、二人を推しカプにして、これからも見守っていたいな、なんて思ってみたり。でもやっぱり、二人を "カップル" みたいな安い言葉で括るのは、それこそ、その世界への冒涜に他ならないのではないかと、読了後も余韻に浸りながら考えたりもしました。感情移入されっぱなしの私は、彼らの世界がこれからも平穏であることを願っています。

『愛でる気持ちがないと廃人になる。
人の心がないと廃人になる。』

 この言葉を読んで、気づかされました。噂って全く信用のならないもので、春川は心の温かい人なんだな、とか、忙しくてゴミみたいな世の中を、奔走する私たちが忘れていたものは愛とかそういう相手を労わったり相手を思いやったりする気持ちなのかな、とかとか。子供のような無邪気さとまでは言わなくても、初心に戻ることって素敵だし、やっぱりその心を忘れてしまったら人間としての幸せな生活が壊れてしまうのだろうな、とか。何か遠い未来のことを考えるばかりじゃなくて、それこそ灯台下暗しに気を付けて、小さな幸せを見つけようとするのも悪くはないのかもしれない、とか。本当に沢山のことを、不良の春川は教えてくれました。水瀬ちゃんはもちろんのこと、そして彼も自分を持っていて。風情や趣のあるものが大好きな人。普通の不良、からはとても思えないようなそのギャップも微笑ましかった。きゅんきゅんドキドキするけれど、人間の汚い部分もぜんぶ映ったこの作品の立体感に何度も心が高鳴りました。
 ふと、アダムとイヴを思い出しました。禁断がどうこうという話をしたいわけではなくて、ただ、あの二人なら、どこででも生きていけそうだな、だとか、『無害関係』から色んな感情が芽生えていくのがまた二人らしいのかもしれない、だとか。そんな風に思っていると、アダムとイヴの話が頭の中に入ってきて、なぜだか無性にわくわくした。彼らが、まだ見ぬ世界へ誘ってくれる気がして、余計にドキドキが止まらなくなりました。想像を掻き立てられて、暫くはこの世界観にどっぷり浸かる日々が続くのだろうな、と思うと、更に嬉しくなってしまって。自分でもびっくりするほど、気づけばこの作品の虜になっていました。
 私も相棒とか、人間愛とか、そういうものを感じられる人に出会ってみたいな、と夢見ながら、今日も彼らみたいに、小さな幸せを見つけにいこうと思います。
 素敵な作品をありがとうございました