Pilleur de oeil -ピヤー ドゥ ウイユ- それは己の生死の運命を変えた事で始まる 眼球を奪い奪われる者達の葛藤と命の物語

作者ちゃいあん。

“生き残る手は奴らの目を奪うのみ”そこには一人一人のドラマがあって―

貧しき少年:目崎悠人は若くしてその命を絶たれた。
そんな彼の元に一つの救いの手が差し伸べられる。
人を生き返らせる力を持った異能の眼球を手にすることは、はたして間違っていたのだろうか?
まさかそれが最悪の毎日を送るきっかけにな…

プロローグ 0. 貧生


 白髪はくはつの青年は財布を開けると、その中身はたったの三百五十円ぽっちであった。


「はぁ〜、今月の土地代に諸々もろもろの家計費を差し引いてこれだけって……。つーか、今日からになるって人間がに頭を悩ませるって、普通ならありえねぇぞこんなの。くそったれ、あんな……あんな事故さえ起きなければ、父さんと母さんは………」


 はした金が入った財布を力強く握りしめ、青年は一人苦しんでいた。


 今日は高校の入学式。


 通学路を歩いていたその男の周囲には、若い男女が同じような藍色の制服を身にまとい、そこはかとなく新たなスタートに期待を寄せる新入生らしき人達も見受けられた。


 だが、彼にはそんな余裕が無い。


 何故なぜこうもいち高校生になる者がお金の…それもなどと大それた費用問題をかかえているのか、それもこれも全ては青年が若い内に両親という頼れる二人の存在をすでに亡くしているため。


 そう、いわゆるというやつだ。


 あろうことか他に頼れる大人がこの男には一人もおらず、この年にして親が残した一戸建いっこだての家計を支えている。


 しかし、そうまでしてこの家にこだわる必要が何処どこにあるのだろうか?


 その答えは彼には支えるべき家族-自分より幼い“妹”が一人いるということ。


 長男である自分を頼りにしている家族につらい生活はさせたくない。


 たったそれだけ……否、充分すぎる理由だ。


 さいわいにも両親は共に高収入だったこともあり、のこしてくれたお金で一年近くどうにかやりくりすることが出来た。


 だがお金は減りに減り、年齢的な制限もあって一向に増えない現実。


 それも今日でおしまい。


 高校生になった彼はついに稼ぐときが来たのだ。


「……いつまでも過ぎたことを言っていても仕方がねぇ。中学も卒業し今は四月。これで労働基準法に縛られず、バイトが出来るんだ。おっしゃ、お金稼ぐぞー!」


 少しでも自分たちの生活に重なるお金を増やしていき、後々あとあとの将来的な給料のことを考えて高校卒業を確実にものにすべく、学業とのバランスはしっかりとしよう。


 天に向かって高らかにバイト宣言すると、周りでそれを聞いていた高校生たちがクスクスと笑い出す。


 男は人がいる前で何をやってんだと赤面しながら、早足で高校へと向かって行った。


 追い越された一人の女子高生。


 彼女は男を見るなり何か思うところがあったのか、不思議なことをつぶやき出す。


「…あれは……そう、貴方が………」


 これよりあの男に降りかかるのは幸か不幸か。


 何処どこかその言葉には、謎の前触れを予感させる響きがあった。