王族に伝わる舞踊は創世竜との意思疎通をする際に欠かせない。
「竜と生きる王国」ナーガールジュナは砂礫の小国であったが、創世竜による気候制御のおかげで富める国になったと伝えられている。
また女王制を敷いており、姫が適齢期になれば婿選びの儀式を行って婿を娶るのが恒例であった。

婿となるための条件は弓…

デカン高原にある竜と生きる王国、ナーガールジュナ。

その王都ビージャーは時期女王である姫、アヌシュカの婿選びの儀式の準備で沸き立っていた。


20年ぶりの儀式に参加する婿候補の中で最有力と目されているのはスブーシュ。

貴族の中でも最上の階級を持ち、アヌシュカと幼少期から面識もある上に舞踊習得の責任者という立場でもあるためだ。

王族に伝わる舞踊は竜との意思疎通をする際に欠かせず、習得は女王となるための絶対条件である。


片や婿となるための条件は弓と剣が扱えること、砂礫を単騎で超えることができること、そして次期女王を心の底から敬うことができることで、出自は問われない。そのため貴族や騎士はもとより、豪農や豪商の息子なども候補として名を連ねていた。

儀式の期間は一カ月に及び、天気雨によって決着が付く。

そして雨季の前に姫と婿が創生竜の前で舞踏を奉納するのが婿取りまでの慣わしである。


儀式の日がやってきた。

王宮の庭園に詰めかけた民草たちの前で、アヌシュカの祖母である現女王による婿選びの開始宣言を行おうとしたまさにその時。

スブーシュが待ったをかけた。

いわく、「アヌシュカは舞踊を習得しておらず、婿選びの儀式は無効である。またそのことを隠して儀式を強行しようとした女王とアヌシュカは王にふさわしくない」

動揺する民草たちの前で王族は捕えられる。


アヌシュカは幽閉されるが、ユディシュティラとナクラが警備の隙を突き連れ出す。

王宮付の士官であるユディシュティラは忠義からアヌシュカの逃亡を計画し、庶民出身で曲がったことが大嫌いなナクラは義憤からその手伝いをしたのだと言う。


婿選びの儀式を来年に順延すれば今のような事態にならなかったのでは、という質問に、アヌシュカはどうしても今年の雨季までに竜と意思疎通をする必要があったのだと答える。

そうしなければ雨は降らず、昔のような砂礫の国に戻ってしまうのだと。

創生竜と乙女の伝説は、おとぎ話でなく事実なのだと。


同じ頃。

スブーシュは天候管理装置、ファザーリ・アストロラーベの試作版を確認していた。

スブーシュはひそかに科学を使った天候管理と統治を計画していたのだ。

協力者は医師を父に持ち自身は科学者のサハデーヴァと、豪農の出で治水灌漑知識を豊富に持つビーマだ。

「竜の時代は終わり、科学の時代が来る。そしてこの国は永久の繁栄を迎える」