人を鉱石に変えてしまう恐ろしい病、「アグロ病」。それは国中を混乱に陥れ、一組の主従を引き裂いた。

〈あらすじ〉

 アグロクォーツという鉱石がある。フランロージオグ王国の鉱山でのみ採れるそれは、とても不思議な石だった。

 色や形は様々。光を取り込むような深みのある美しさは人々を魅了し、多くのアクセサリーや装飾に加工された。それだけではなく、鉱石は多大なエネルギーも秘めていた。フランロージオグ王国では一家に最低一つアグロクォーツが置いてあり、光も熱もそこから取り出して生活していた。

 庶民から貴族まで幅広く根付いた、無くてはならない鉱石だった。


 ところがある日、鉱山で採掘作業をしていた鉱夫の肩に、アグロクォーツとよく似たものが出現する。擦っても叩いても取れないそれは、まさに生えてるといった風で。それは仲間の鉱夫にも次々現れた。

 最初は皆気味悪がったが、だからといって不調が現れる訳でもない。それどころか身体能力が大幅に向上しており、仕事がいつもより捗った。

 何人かはその謎の症状を恐れて仕事を辞めたが、大半はそのまま続けていた。むしろ体調が良いくらいだ、と陽気でいたのもつかの間。

 最初に石が生えてきた鉱夫の全身が、一瞬にして鉱石に覆われた。いや、覆われたというよりは体自体が鉱石になった。そして亀裂が走ったかと思うと、パリンッと弾けて粉々になってしまったのだ。散らばるのは、国民がよく見慣れたアグロクォーツとなんら変わりはない美しい鉱石。


 アグロクォーツの高いエネルギーを浴び続けると、人は石になってしまう。国は体の一部に鉱石が浮き出た人を「アグロ病」感染者と呼んだ。更に恐ろしいことに、アグロ病感染者は鉱石ほどじゃないにせよ、微弱なエネルギーを放つことが判明。アグロ病は鉱夫やアクセサリー商等、アグロクォーツを長時間触れる人から、その家族へと広がりを見せた。病を恐れる人々は、感染者を国の外れに隔離することにした。


 センテブル侯爵家の跡取り、リュゼ=センテブルもアグロ病感染者の一人だった。

 隔離区域に連れてこられたリュゼは、まるで人間扱いされないその環境と、絶望したように死んだ目をする感染者たちを見て、自分が彼らのリーダーになることを決意。大幅に向上した身体能力を生かして、感染者を見捨てた国に革命を起こすことを宣言する。

 一方、リュゼの従者であるアーギルは、隔離区域へ連れていかれる際にリュゼが放った「殺して……」という言葉が頭を巡っていた。その時は敬愛する主人を斬ることが出来なかったが、革命という名目のもとクーデターを起こすリュゼを見て、今度こそ自分が彼を止めると……殺す、と心を決めた。