自分の居場所ってどこにあるんだろう……。巻き込まれて異世界に飛ばされた吏太は、様々な人と交流しながら考えていく。日本に帰るのか此処に残るのかを。

〈物語のあらすじ〉


 災害で両親を失い、唯一の居場所だった弟は修学旅行へ行ったきり帰ってこなかった。


 田舎でバス運転手をしている椿 吏太は家族が居ない。それでも温かい友人や職場の仲間、乗客に囲まれて充実した日々を送っていた。


 ある日吏太は、不思議な少年─三門と知り合う。三門を助けるために共に海に飲まれ、次に目を開けるとそこは異世界だった。どうやら大きな災害があると、時空が歪んで日本とこの国─蒐が繋がってしまうらしい。

 助けてくれた現地の住民によると、蒐では現在、国の王である『導』を誘拐した罪で日本人が迫害されているという。

 共に渡ってしまった三門のためにも、自分が日本人ということを隠して働かなければ……そう考えていた矢先、三門が実は『導』であることが発覚。吏太も一緒に王宮へ連れてこられた。

 そこで生き別れの弟─勒と再会。騙していたこと、急にいなくなったことへの謝罪。そして、また会えて嬉しいと言われた吏太は涙を浮かべた。


 『導』は花から生まれる。元々花が希少なこの国ではその神秘性も相まって、導は神聖視されている。

 王宮の庭園へ案内された吏太は、三門こと釈導は椿の花から生まれたのだと教わる。自分の名字とも同じその花に妙な縁を感じた。


 王宮の人間と関わるうち、ずっとこの世界にいるのも悪くないかも…と思い始めていた吏太は出掛けた町で、自分と同じように災害で出来た空間の歪みを通ってやってきた日本人達と出会う。導に保護された吏太と違い、酷い扱いを受けてきた彼らは切実に帰還の方法を探していた。

 自分が特別だっただけで、本来ここは日本人のいる場所じゃないと気付いた吏太は、帰る方法探しに協力すると約束する。


 もし本当に方法が見つかったら、自分はどうするのだろう。悩みながら過ごしていたある日、何者かに命を狙われるようになる。

 その正体は、導は二人も要らないと生まれる前に花を手折られた導のなりそこない─絶栄だった。心から釈導を憎む絶栄は、彼が大切にしている吏太を殺すことで癒えぬ傷を与えようとしていた。


 自分を必要としてくれる人の側か。

 生まれ育った故郷か。

 

 これは、一人の青年が悩み、時には傷つきながら居場所を探していく物語。