春の始まりなのに。今の夏の終わりを感じさせる、面白い世界観に誘ってくれました。出会えて良かったと思える、昼下がりの透明な物語。透明なサイダーの弾ける軽さとは反対に、読み進めればシリアスな展開になっていくダークな重さ。そのコントラストが綺麗で、思わず息を飲んだ。気づけば、深くて濃い透明色に吸い込まれていました。でも、それは怖くはなくて。寧ろ心地が良かった。胸の奥が切なく軋む、人生のストーリーでした。
 彼らは、昔の後悔から、卒業できない。夢物語だったり、綺麗ごとだったり。そういうので片づけないラストの展開が堪らなく好きでした。読者によって、捉え方も全然変わってくるような、示唆に富んだ一ページ。
 監視し合うような、かと言って傷を舐め合わない、変わった距離間の二人。歪んだ愛情。その歪み方が独特で。でも、どこかで。こんな風に透明を分かち合える人がいればな、と、彼らの関係を羨んでいる自分もいました。たぶん、この危うい脆さに惹かれてしまうのだと思います。そんな不思議な魅力がこの作品にはいっぱい詰まっています。
 淡い色彩、水の透明感。全てが綺麗に思えるのに。その美しさには、毒があった。私も、透明な致死量に至るまで、想い出も、悲しみも。全部、ぜんぶ、忘れないように纏っておきたい。
 視覚も聴覚も楽しませてくれる、素敵な作品をありがとうございました