彼氏いない歴5年、もう直ぐ28歳の誕生日を迎える早岡夏菜はアラサーと呼ばれる年代に日々焦りを募らせる。


金はあるけど異性との出会いは皆無。母校で高校教師としての職を得て真っ当に生きる彼女の最近の趣味は、勤務する学校の二年生である名瀬伊織を眺める事。この学校の出身者で自分と同級生だった兄を持つ伊織がこの学校で生活する姿はまるであの頃の兄・伊月を彷彿させて。


あの頃誰もが焦がれた名瀬伊月に当たり前に焦がれた自分の初恋を静かに思い出す。



悲惨なアラサーと言う現実から逃避する為。夏菜は今日もあの頃の青春に浸り枯れた心を潤す。そんな毎日に変化が訪れたのは、新学期を迎えた4月。


校長の指示により夏菜は3年3組の担任となる。なんの因果かその教室は10年前自分が名瀬伊月と過ごした教室で。そして今度は教師として教え子達を導く立場になったが渡された名簿には名瀬伊織の名前が。



伊織は伊月とは違うのに。どうしても此処で過ごした1年を伊織と重ねて見てしまう。思い出す甘酸っぱい記憶は不覚にも枯れた心を潤わせて。


今日も彼女は元気に過去と現在の記憶に翻弄される。職を失うか、やっと潤い始めたアラサー独身女の悲惨な心を再び失うか。



犯罪者にはなりたくないと願いながら大切にしていた記憶と願望に抗えないアラサー女子の奮闘記です。