穢れ巫女 ~千年の呪い~

作者万業破印

 地上世界を支配する大倭という国がある。そこに、穢れ巫女と呼ばれる少女が在った。これは、妖を胎内に封じ、国の為に死なねばならない少女とそれを守る妖の恋物語━━。

             物語全体のあらすじ


 地上世界を支配する大倭の国。

 そこに己の体内に妖を封じ、自らの力にしてしまう少女がいた。それを穢れ巫女と呼ぶ。

 穢れ巫女は子宮に妖を封じ込めると、支配して自由自在に使役することが可能。

 ただし、十八歳を迎えると封印されていた妖は解放され、巫女の肉体と魂は消滅してしまう。その為、巫女は十七歳になると『鎮魂の儀式』を行わなければならなかった。

 それは己を生贄にし、神々の力によって封印された妖を次代の穢れ巫女に継承するものである。

 今代の巫女ユカラにも運命の日が刻々と近づいていた。


 ユカラには護衛として常に付き従う少年の姿があった。名を『百目』。ユカラの祖先に敗れて以来、忠実な使い魔として常に代々の穢れ巫女に仕えていた。百目の使命は巫女の護衛だけではない。それとは、胎内で暴れる妖によって引き起こされる巫女の性欲を満たすことであった。


 いつもの様に百目はベッドの中でユカラを慰めていた。すると、普段は気丈なユカラが泣きついてきたのだ。


「嫌だ、私、死にたくないよ!!」


 ユカラは泣きじゃくり、百目はただ優しく彼女を抱きしめてやった。


「なら、俺と逃げるか?」


 その瞬間、ユカラはピタリと泣き止むと、笑い声を上げながら云った。


「ふふ、まんまと私の演技に騙されちゃった?」と。


 しかし、百目はユカラの小さな肩が小刻みに震えているのを見逃さなかった。それ以上、彼は何も言わず再びユカラを抱くのだった。

 それから、遂に儀式の日が訪れた。ユカラは生贄に捧げられ、その能力は次代の巫女に受け継がれた。


 これで何度目の絶望だろうか、と百目は心で独りごちた。


 次に選ばれた巫女はユカラの妹である。名をムカル。年齢は十。

 百目は契約に従い、従属の証としてムカルの足に口づけをする。

 すると、ムカルは堂々と百目に宣言した。


「あたし、巫女、やーめた!!!」と。


 驚き戸惑う百目。ムカルは更に続けた。


「使命の為に死ぬなんてまっぴらごめんだわよ。これからあたしは巫女の呪いを解いて百歳まで生きてやるんだから! 百目、ついてらっしゃい。もし、あたしの呪いが解けたなら、あんたも解放してあげるからさ」


 そうして、百目はムカルと共に巫女の呪いを解く旅に出る。それは、国家への大逆をも意味する絶望的な逃避行。だが、百目の目には数百年ぶりの希望が灯っていたのだった。