育種家令嬢と思い出の薔薇園~燃えた記憶と初恋の吸血鬼閣下~

作者水銀あんじゅ

物語の全体のあらすじ

 薔薇の精油で生計を立てているヴィルジーニアは子爵令嬢である。魔人の執事と、悪魔の家政婦、フットマンとメイド数人と庭師と家族同然の生活をしている。しかし子爵家の運営自体は商家に任せており、実質没落していた。
 祖父は人の血液と花を融合させ作った、結晶精花《クリスタリザ・フィ…

物語全体のあらすじ


 薔薇の精油で生計を立てているヴィルジーニアは子爵令嬢である。魔人の執事と、悪魔の家政婦、フットマンとメイド数人と庭師と家族同然の生活をしている。しかし子爵家の運営自体は商家に任せており、実質没落していた。

 祖父は人の血液と花を融合させ作った、結晶精花クリスタリザ・フィオ・サングエレを魔族に提供していた。その結晶精花は個人個人に合わせて作るために高価だが、そのおかげで魔族は人間を襲うことなく、花から精気を摂取できることになった。


 しかしそれに使われる血液は、その結晶精花を求める者すべてに力を与えるかというとそうでもない。基本的には心を通わせた親しい人物の血液と、依頼者と相性のいい花を融合させるものだが、稀に合わない場合もあった。


 けれども魔族が飢餓感を感じる頻度と人間が襲われることも減ったため、祖父は多大な貢献をした人物として、一躍時の人になったのである。育種家の魔王や育種家子爵と呼ばれることとなった。


 しかし祖父は、魔族が結晶精花で更に強力になるのを恐れた何者の手に掛かり、死んでしまった。犯人は屋敷に火を放ち、一緒にいた家族も怪我をしたが、祖父は自分が犠牲となって家族全体を守った。

 その一件で家族は、魔界の女帝の一計で記憶を封じることで身を守ることにし、別人として生活している。


 しかしヴィルジーニアはおじいちゃん子であり、事実の究明がしたかった。そして祖父や一家の悲劇ではなく、名誉が回復すればと願っていたのだ。そのため記憶を封じることなく、家業の薔薇の精油作りだけは続けていた。


 そんなある日、後見人の吸血鬼夫人である、霞の花の夫人が病魔に侵されたと手紙が来る。

 驚いて翌朝訪問するヴィルジーニア。夫人の病状は思わしくなさそうで、ヴィルジーニアに、亡くなった祖父や、今生の別れをした家族の姿が頭をよぎる。しかし子息は呪いだと思っているらしい。子息はヴィルジーニアに、君の祖父の技法、つまり結晶精花を用いて母を助けてほしいと懇願してくる。

 確かに子息が言うとおり、ヴィルジーニアは祖父からその技法を受け継いでいる。工房を遊び場としていたため、自然に覚えてしまったのである。しかし実力が足りないことも十二分に知っていた。

 ヴィルジーニアは記憶を封じて幸せな生活を営んでいる家族が、自分の行いで襲われてしまったらと思い悩むが、後見人の霞の花の夫人の病状を見て祖父とだぶらせ、なんとか結晶精花を生み出すことを決意する。