物語全体のあらすじ


 幕府主導の維新が起こった架空の明治時代。廃刀令は発布されず、剣術は変わらず武士の心得とされていた。維新を成し遂げたのは、江戸時代を通じて発展を遂げた護国八流ごこくはちりゅうとよばれる流派の剣士たちだった。彼らは五行(火、水、木、金、土)各要素の「気」を操る超人的な剣術を使い、維新後も東都陸軍として幕府を守護していた。

 一方、かつて倒幕を目指した者たちは幕府に恭順の姿勢を示しながらも、帝のお膝下で西都陸軍を創設し、不穏な動きを見せていた。


 護国八流の一派、虚心克鍛流きょしんこくたんりゅうの相伝者である羽黒玄一はぐろげんいちに育てられた冬司とうじは、奥義「虚水呻吟剣きょすいしんぎんけん」を受け継ぎ、祖父・玄一の言う『まことの剣士』になる事を夢見て東都へとやって来る。


 若き剣士が集う士官学校へやって来た冬司は、そこで祖父にも匹敵するほどの剣技を目撃する。その後、士官学校13番組組長の穂村煉狗ほむられんくと剣の試合をしたことでその腕を認められ、士官学校総長の志津宮麟しづのみやりんによって東都陸軍士官学校に迎え入れられる。


 初めこそ、維新の英雄にして脱藩者の羽黒玄一の孫という事で周囲の反発にもあうが、持ち前の気取らない性格と並外れた剣技で周囲からの信頼を得、剣術指導役を務めるようになる。そんなある日、冬司は政府高官が襲撃される現場に遭遇し、助けに入る。刺客と剣を合わせた冬司は、相手が煉狗であり、幻の流派「熒幻神陰流えいげんしんかげりゅう」を使うことに気が付くが、確かめる前に逃げられてしまう。


 その頃、西都陸軍は帝のご病気に伴い、幼い淡海宮おうみのみやを次代天皇として立て、再び討幕に動こうとしていた。それを察知した東都陸軍は、対抗策として桜子内親王さくらこないしんのうを女帝として即位させようと目論む。東都軍上層部で発言権のある麟は、冬司を内親王の護衛役に推薦する。


 一方の冬司は、煉狗に政府高官襲撃の真相を質そうとするが答えてもらえない。しかし、煉狗について知ろうとするうちに、麟から維新戦争の折、討幕派・森垣藩の藩士であった煉狗の父を討ったのが祖父の玄一だった事を教えられる。そんな中、桜子内親王の東都入りが決定し、出迎え役に煉狗、冬司を始めとする13番組が選ばれる。


 西都で彼らを待っていたのは、護国八流を滅ぼそうとする陰陽師、梅小路陽清うめのこうじはるきよの罠と桜子内親王の暗殺計画だった。次々と起こる危機を乗り越えて内親王を守りぬいた13番組は、近衛組と呼ばれるようになる。そこで共に戦う煉狗と冬司の間には、いつしか友情と信頼が生まれていた。二人の友情はやがて、祖父たちがそうであったように二人を『真の剣士』の道へと導いてゆく。