出漁中に遭難した漁師の娘が英国に渡り、諜報工作員(スパイ)として帰国します。彼女は「日本を英国の植民地にするため」に命懸けで奔走します。幕末から維新に起きた、日本と諸外国との事件・紛争・戦争を「彼女の画策で起きたと想定」し、植民地化を狙われた日本の危機と、それを回避した偉人たちの姿を描きます。

       物語全体のあらすじ


ペリーが浦賀に来航した1853年。

足摺岬に近い漁村に暮らす、活発で聡明な美少女すず(13)は、

勇敢な漁師の父、地引網を引かせたら男にも負けない力自慢の母、

初出漁が決まって張り切る兄、と4人で暮らしていた。


流行病で父と兄が亡くなり、すずは遊郭に売られそうになるが、

母の機転で、兄と偽って漁に出る。

初漁で嵐に遭った すずは、無人島に流され、米国の捕鯨船に救助された後、

ハワイで英国外交官に誘われて、渡英を決める。


英国で日本の悪政を教えられたすず は、家族の死因を悪政のせいと考え、

徳川幕府への恨みをつのらせる。

謀報工作員(スパイ)を育成する機関で「情報操作」「破壊工作」を

習得した すず は、香港に渡って清国人の言語、作法、カンフーを学ぶ。

1860年12月、すずは、清国人の鈴華(20)として横浜港から帰国する。

肩書は『英国公使館通訳』。七年ぶりの日本だった。


1861年2月。不凍港が欲しいロシアが、対馬を軍事占拠する【対馬事件】。

これに英国が介入した。ロシアを退去させ、英国が対馬を占拠するためだ。

鈴華は情報収集に奔走するが、仏国の女スパイ、ソフィ・セベール(21)

に妨害される。

仏国は幕府と親密だが、日本との輸出入利益を独占したいだけだ。

租借・植民地化も狙っている。


1862年8月。鈴華は、英国と日本が交戦するために【生麦事件】を仕組んだ。

狙い通り、1863年に【薩英戦争】が起こる。

このとき鈴華は、捕虜として収容された 五代才助(28)と出会う。

五代は上海渡航の経験があり、日本の植民地化阻止を使命と考えていた。

鈴華と五代は正反対の立場だが、二人は意識しあう。


1864年。鈴華は、駐日総領事のオールコックを操り、

【下関戦争】を勃発させる。


鈴華は、1863年1月の【英国公使館焼き討ち事件】後、

長崎のグラバー商会で秘書を装っていた。

そこで出会った 坂本龍馬に、海外情勢を教えて「革命」をそそのかした。

が、内戦目前で龍馬が和平に動いたため、着物姿で上洛し、龍馬を殺害する。


その二か月後、1868年1月。日本で内戦【鳥羽・伏見の戦い】が始まり、

開戦八日後に、神戸が英国主導で外国六か国に軍事占拠される【神戸事件】。

すべて、鈴華の策略通りに進んだ。が、


鈴華を英国のスパイと見破った五代が、外国との交渉のため神戸に来ていた。

「日本は酷い国。イギリスの植民地になった方が、国民は幸せになる」と

いう鈴華に、「その酷い国を、必ず良い国に変える」と約束する五代。


二人の理想は、鈴華が英国を、五代が日本を捨て、二人で米国に渡ることだった。

激動の世に一瞬見た夢だが、実現は不可能だ。

五代は日本を守るために刀を抜いた……。