舞台は『放射能汚染された雪(ニュークリア・スノウ)』が降り続けるディストピア。
ストーリー概要および物語の設定
2032年、世界最大の原子力発電所の爆発事故が発生した。
大規模な地盤沈下を起こすほど大爆発。核燃料は海の底に沈み、海水を無尽蔵に蒸発させて地球の空を覆い尽くした。
太陽の光が届かなくなった地球は一気に寒冷化。それでも海の底の核分裂連鎖反応は止まることなく、300年間、放射能汚染された雪がずっと降り続いている。
生き残るために人間は塔に閉じこもった。そして、今日も塔を高くし続ける。雪に埋もれて死なないために。
塔のてっぺんには傘のような屋根があり、雪が侵入するのを防いでいる。全500層の内部は層によって住居区画、訓練区画、農業区画、酪農区画、工業区画、発電区画、墓地区画と分かれている。エネルギー源は皮肉にも人間の平和を奪った原子力だ。水耕栽培と酪農によって作った食糧によって、彼らはなんとか生きている。
そんな世界では、とある移動手段かつ戦闘装備が発達した。
それが「Iks―アイクス―」。足には電動で加速するタイヤを出し入れできるスキー板を履き、手には剣に変形するストックを持つ。アイクスによって雪上でも高速戦闘が可能になった。
毎日のように戦闘は起こる。何せ、塔の高さは既に6000mを超えている。周辺に建築資材となるものはない。
そう、彼らが建築資材を得るには、塔同士で奪い合うしかないのだ。
主人公の御幸(みゆき)は白燕(はくえん)の塔では屈指の実力を持つ若きホープ。だがその日は白燕にとって地獄の一日となった。急遽攻め込んできた黒鷹(こくおう)の塔に完全敗北したのだ。白燕は黒鷹に吸収されてしまう。
黒鷹は必要な物資と人員だけを取り上げ、御幸も黒鷹へと移る。そこで御幸は厳しい現実を突きつけられる。
役に立たない人間はすぐに切り捨てる。仲間意識の強い白燕に対し、黒鷹は競争意識の高い塔だった。
仲間たちの多くが殺され、彼は苦悩する。
戦争、差別、権力闘争。人間の本質は何千年も変わらない。それでも彼は生きることを決意する。
これは理不尽な世界に抗う一人の少年の物語。