シンデレラ、インフルエンサーになる。

作者眞弓るり

「あなたの前世は、おとぎ話の主人公。なんと、シンデレラ。だから、この世で夢をあたえる存在、インフルエンサーになるんです!」
そう宣告された20歳無職の灰原玲子は、七人の男を侍らすビッチの白雪姫(の生まれ変わり)、元ギャルだけど断れない性格のかぐや姫(の生まれ変わり)と一緒に、インフルエンサーになる…

20××年、並行世界。我々が住む世界と違うのは、人間の「生まれ変わり」が特定されるようになったということ。

20歳の成人を迎える日に、それはまるで戸籍を確認するくらいカジュアルに自分の生まれ変わりを知ることができる。



ただ、個人情報の観点から、「北インド出身・在住の主婦、四人兄弟の2番めにうまれ、25歳で結婚した。趣味はカレー作りとドラマ鑑賞。享年60歳」といった感じで、140字くらいにサマった状態で手渡される。


人によってはそれが生きる糧になったり、その逆もあるであろうが、大体は名もなき小市民である。

「前世占い」くらいのノリで、成人式の飲み会のネタになるのが関の山である。


ただし、まれにとんでもない「生まれ変わり」が存在する。

それは、「おとぎ話の主人公」の生まれ変わりである、ということだ。架空の人物の生まれ変わりなんて、本来だったらありえない話だ。


おとぎ話の主人公は基本的に「永遠に王子様と幸せに暮らしました。めでたしめでたし。」なので、死んでいない、永遠に生きているはず。言い方をかえると「生まれ変わっちゃいけない存在」なのである。



おとぎ話の主人公はその主人公らしい人生を歩ませ、死なせてあげるべきではないか。

そして、おとぎ話の主人公は、みんなに勇気を与えるような存在であるべきではないか。

つまり…現代で夢を与える存在、インフルエンサーになるのだ!

そんな無茶苦茶な論理から、

「生まれ変わり法(前世法)に関する特例ー空想上の人物の生まれ変わりに関する特別条例」が制定された。


おとぎ話の主人公の生まれ変わりである人物は、ほどなくして全国民にその存在が通達され、自動的に国の定めたエージェント会社の所属となる。


そして、「その主人公らしい人生をおくること」「Twitterとインスタグラムとyoutubeでその生活を公表すること(つまりインフルエンサーになるということ)」が義務付けられるのだ。


灰原玲子もその一人だった。彼女はシンデレラの生まれ変わりだった。


シンデレラの生まれ変わりとして、全然シンデレラ然としてられない女の子のインフルエンサー物語。