茉莉花は地獄に堕ちたい

作者唯緒シズサ

「私、地獄行きを希望します」
天国行きの決まっていた茉莉花は、閻魔宮で浄瑠璃の鏡に映った生前の行いを見て、先に死んだ夫が、茉莉花を守るために実母を殺害し、その事実を茉莉花が義母に恨まれて殺害されそうになったことで傷つかないように隠していたことを知る。茉莉花は閻魔が秘密裏に手配していた協力者カルマの…

「私、地獄行きを希望します」

天国行きの決まっていた茉莉花は、閻魔宮で浄瑠璃の鏡に映った生前の行いを見て、先に死んだ夫が、茉莉花を守るために実母を殺害し、その事実を茉莉花が義母に恨まれて殺害されそうになったことで傷つかないように隠していたことを知る。茉莉花は閻魔が秘密裏に手配していた協力者カルマの手引きもあって、地獄に落ちることに成功する。

カルマは閻魔の特別扱いを受ける茉莉花を快く思っていなかった。

地獄で夫に再開するが、罪を洗い流した夫は生前の記憶も失っている。話を聞いて幸せになってほしかったのだろうと他人事のように言われて突き放され、地獄を統括している炎天大魔王のところへ行ってしまう。

自分が原因で罪を犯したのならば、自分も罪を償いたいと、炎天大魔王のところに向かう茉莉花だが、それは必要ないと一蹴されてしまう。

地獄の概念や罪や罰は人が考えたもので、人間の魂のリサイクルの際に、罪の意識を「罰を受けて償う」ことにより、記憶を漂白するただのシステムで、地獄も自分たちも人間の思想や概念によって形作られ、それを演じているに過ぎないといわれる。

なぜそれを自分に聞かせるか聞く茉莉花に、君は上がりだからといわれる。茉莉花の境遇にひどく同情したある菩薩が、この輪廻を断ち切ってあげたいと言っているらしい。

 それでもこのまま夫を見捨てられないという茉莉花を面白いと気に入った炎天大魔王は菩薩の目をかいくぐり、もう一度生まれ変われる方法があるという。

 地獄に現世につながる門があり、そこをくぐれば生まれ変わり、もう一度同じような人生をやり直せるという。

 もう一度やり直し、今度こそ夫を救うと決意する茉莉花に、夫とカルマは協力し、困難の末、生まれ変わることに成功する。罪から目をそらず、自分の意思を貫く姿に、なぜ閻魔や炎天大魔王が彼女に協力するのか理解し始め、彼女を認めるカルマ。

 カルマはその後、何度も彼女たちが同じように地獄に来て困難を乗り越える様子を助けて見守り、ついに気の遠くなる年月の後、二人が母親殺しの罪から解放され、幸せになる姿を見届ける。