◎物語全体のあらすじ


蝶がとんでいる。

白く眩しい煌めきの中を。

漂うように、流れるように。

描く軌跡は私を写し出す。

冷たい足先が哀しくなる。

内側から熱く叩かれる。

嗚咽が漏れだしたって。

意味なんて、ない。


花がなければ。


目指す場所なの。甘い密があるの。生きる糧なの。枯れて塵になったとしても、寄り添って同じように散りたいの。


「凛太朗さんだけなんだよ」


誰も代わりになれない。そんなの当たり前なんだって解ってるつもりで探し続ける。空白を進み続けて、私はどこまでたどり着いたのかな。


羽根はまだ生えているかな―


期待に応えられなかった。でも家族のために頑張らなくちゃ。早く自立しなきゃ。樫木胡蝶(かしきこちょう)は訳ありフリーター。20歳になり心機一転、自動車学校に通い始めた。そこには唯一苦手な教員がいる。彼の名は、華原凜太朗(かはらりんたろう)。端正な顔立ちと気怠そうな雰囲気。誰からも目を惹かれる存在だが、胡蝶は反射的に関わりたくないと感じていた。


しかしここは教習所、特に指名する教員もいない胡蝶は、凜太朗こと『先生』が担当する日がやって来る。女性慣れしているような絶妙の距離感で接してくる先生に、まんまと教習所マジックで恋をしてしまう。会釈をする程度には打ち解けたが、進展することはなく日々は過ぎていく。奇跡的に再び先生が担当することになり、優しい言葉に本気で恋を自覚することになる。


教習所生活も終わりの日、卒業検定を無事に合格した胡蝶は決意を固めていた。鞄に潜ませた、連絡先を記したラブレターを先生に渡す機会を伺う。粘ったかいあって、僅かなタイミングで手紙を受け取ってもらうことに成功したが、恥じらいで逃げるようにその場を去った。結局先生から連絡は来ず、眩い夏は思い出に変わったのだった。


月日は経ち、春の訪れ。もうすぐ念願のカフェスクールに入学だ。街中を歩く胡蝶は、見覚えのある猫背とウェーブヘアを発見する。無我夢中でその人物を引き止め、先生だと確認する。未練を浄化するために、勢いで振ってほしいと告白してしまう。驚く先生だったが、気が向いていたのか連絡先を交換することに。ご飯に行く約束まで取り付けることに成功した。


胡蝶自身も状況についていけてないが、最後のチャンスだと腹を括る。決戦の日、お酒も交えながら、わりかし楽しく過ごす2人だったが、別れ際に先生の冷めた一面が現れて胡蝶は混乱する。それでも胸の奥から溢れ出てきた想いは止められない。胡蝶と凜太朗の物語が始まる。