夢の中でしか触れ合えない、幽霊の青年との恋。
子供の頃から続く甘美な夢は、次第に現実から色を奪っていく…。
夢と現実の狭間で揺れ動く、官能と幻想の物語。

 絵本作家を夢見る社会人2年目のかなえは、美しい幽霊の青年シオンに憑かれていた。古い鏡に映ることを除けば、二人が会えるのは夢の中だけだ。


 母を失った火事の悪夢を毎日のように見ていた中学生の頃の叶。その夢にシオンが現れ、燃える家をお菓子の家に変えたのが二人の出会いだった。二人は家族のように過ごすが、叶が恋の夢に興味を持ったことで、二人は男女の関係になっていく。シオンは官能と幻想の夢で叶を虜にし、独占しようと企んでいたのだ。


 シオンは宿主に望む夢を見せるが、周囲の人間には悪夢を振りまく。叶はそれに対する罪悪感を抱いていた。


 後輩の日向ひなたの助言で、自分の母とシオンの写真を見つける叶。シオンは生前、叶の母に恋していたのだと語る。叶は自分が母の代わりにすらなれないことを悟り、虚しさを覚えるも、依存をやめられない。


 悪夢に悩む社員の自殺未遂を契機に、叶はシオンを追い出すことを決意。日向の協力を得て、絵本作家という「夢」を武器に戦うも、敗れてしまう。「夢」から情熱が消えていたことに絶望する叶は、子供の自分が描き、母が読んでくれた絵本を見つける。理想への憧れとは異なる、あの時のような幸せが自分を支えるのだと気づき、夢で再びシオンに立ち向かう。


 お菓子の家に行き着き休戦する二人は、火事の悪夢を見つけてしまう。叶は、母がシオンに自分を託して亡くなったことを知る。


 シオンは病弱で空想を好んでいた生前の自分を回想する。彼は傲慢だったため、幼馴染みだった叶の母も離れてしまったのだ。


 あるとき叶が通り魔に襲われ、シオンと日向は協力して助けようとするが、彼女は川へ落ちてしまう。


 その後、叶は無事に日常へ戻ったかに見えたが、それは昏睡状態の叶にシオンが見せていた夢だった。


 それを知った叶は「自分はこれを望んでいたのかもしれない」と言い、家族・親友・恋人としてシオンに愛を伝える。夢を見ることしか知らない自分に、生きることを教えてくれた叶は、自分の全てだと告げるシオン。毎晩夢を見たベッドの上で、ふたりは結ばれるのであった。


 叶を独占して初めて、二人だけの世界は彼女には狭いのだと感じるシオン。叶が自由に生きることを望む自分に気づき、持てる力で彼女を目覚めさせる。


 昏睡から目覚め、シオンが夢に現れなくなった叶。仕事をしつつ絵本も描き、充実した今を生きていた。弟のように可愛がる日向と花見に出かけた叶は、うたた寝の中でシオンに再会する。