彼と彼女と世界の終わりの魔術式

作者ももん

 王国の魔術研究機関を追放された若き魔術研究者ジルは、住み込みの家庭教師の仕事を受けることにした。そこで、出会った領主代理の少女ナディアは、ヴァンパイアであり自分が必ず殺されること、そして時が戻り、永遠のように同じ時間を繰り返し生きているということを知る。
 王都で魔術の研究をしていたジルは、自身…

魔法のiらんど コミックシナリオ大賞(彼と彼女と世界の終わりの魔術式)

物語全体のあらすじ


 剣と魔法の西洋ファンタジー風の世界観で、動力として魔力を利用、技術として魔術が発展し、比較的文明が発達している世界である。この世界では、魔法と魔術は魔力を基にして奇跡を具現化するという点では本質的に同じものだが、魔術は魔法の使えない、魔力量の少ない者(特に人間)でも魔法に準じた奇跡を起こせるよう、魔法を変換し普遍化された技術として創造されたものとしている。


 神話の代に存在したとされる魔法はやがて一部の者だけが知る存在となり、基本的には魔術が一般化し、広く利用される世界となった。魔術は魔術式(私たちの世界で言うところのコンピュータプログラムに近い概念)によって構成されている。

 


 王国の魔術研究機関に所属する若き研究員のジルは、ある時、世間に発表していない自身の研究魔術「術式対象者の限定性とその効果適用範囲における拡張限界の可能性について」に関する論文が、長く師事してきた教授によって発表されたことを知る。ジルはすぐに撤回・修正を求め教授に詰め寄るも、逆に学会を追放され職を失ってしまう。


 その後、自分を裏切った教授から最後の情けだ、と遠方での家庭教師の仕事を紹介され、募集内容の用紙に触れた瞬間、『来ないで!』という強い言葉とともに知らない少女の顔がフラッシュバックする。怪しい点があるものの背に腹は代えられず、ジルは家庭教師の仕事をすることになった。


 自身の住んでいた王都から北へ向かう馬車の道中、なんとなく見たことがあるような違和感を覚えるジルだが、その光景に思い当たる節はない。目的の屋敷までは半日以上かかる旅路であるため、ジルは目を閉じ仮眠をとることにした。


 それは夢なのか、ジルは、一面炎に包まれる村、燃え盛る炎の中瓦解していく屋敷、そしてまた、あの名前も知らない少女の顔が浮かんだ。少女が何かを言いかけたところで、ジルは目を覚ました。目覚めると何を思うわけでもないのに、なぜか涙がこぼれていた。


 もうじき日が暮れるという頃、馬車は村に到着する。村は極端に若者が少なく、軍部の人間が常駐しているなど、どこか普通ではない、違和感があった。やがて、馬車は雇い主の屋敷の前に止まり、ジルは屋敷のメイド・ヴェロニカに歓迎されることとなった。


 夕食の時間になり、屋敷の主であるナディアと対面したジルは、どこか懐かしいような、不思議な感覚に包まれる。なぜだろう、初めて会った気がしない……ジルはそう思いながら、ふと尋ねてしまう。


「どこかでお会いしたことありますか」