Twitterで見かけて日本神話に関する小説とお見受けして読ませていただきました。私の宗派は違うのですが、神社検定を受けるぐらいには神道への関心や親しみもありますので。
作品としてはほぼ「たまたまその場にいあわせた人たちの会話」で話が進むので、小説に「派手な起伏や複雑な伏線、悲劇のカタルシスや爽快な勧善懲悪もの」を求めている方にはさほど合わないかもしれません。その代わり、人が心と心で通い合う上品な会話を楽しみたいという方にはきっと素敵な読書時間となることでしょう。
日本神話をたしなんでらっしゃる方ならば、作中に出てくる人名や遷宮の話題や得意とすることなどから誰が話しているのか予想ができることと思います。それを楽しむのもまたよろしいかと。主人公の性格かもしれませんが、袖振り合う縁の相手に対しても内心で尊敬語を使っています。それが雰囲気も醸し出しているのでしょう。
小説というより神社に奉納されている絵巻物語という感じではありますが、感性が合う方にとってはよい作品となることでしょう。