自転車立ちこぎで、あの人の背中を追いかける

作者丸山矢識子

まだまだ子供の女子中学生。
そんな彼女が、高校受験の不安の中、少しだけ成長する短い物語。

 颯爽と風が通り過ぎていく。

 いや、それは逆だった。

 私が、春の匂いを纏う空気の中を駆け抜けていく。


 中学生になって三年目。

 もう自転車の立ちこぎも慣れたものだ。


 そしていよいよ、今年から受験生。

 うまくいけば、来年からは高校生。


 今のセーラー服と似ているようで全く違う、大人びた制服に袖を通すことが今から楽しみだった。