誰かを愛する、ということには、資格が必要だと思っていた。もし、彼女がマスカラで伸ばした睫毛の先まで、その分まで予測して、愛で満たすことができていたとしたら。「狂ったもん勝ちですよ、この世ってやつは」
「篠塚さん、好きです」
雑踏に掻き消されそうな小さな声を、俺の耳はちゃんと拾う。拾ってしまう。じっと俺を見上げる彼女の、涼しげな奥二重の下、双眸が潤んでいる。