(ネタバレ注意)

 暗闇に包まれた世界を生きるしかなかった二人は、何処にでもいるような”普通”の男女の一面を持っていて。けれど、どこか世を諦観しているというか達観している部分もあって。殺人という惨い行為を平気でやる残忍さを持ち合わせていながら、年相応の少年少女のように夢に思いを馳せる純粋さや無垢さがある。そのちぐはぐさに酷く心惹かれました。読み終えた今、何故だか、夜に覆われた街の空から降ってくる、透明に近い白のベールを思い起こさせられて。美しくて儚い景色を見届けたような気もしています。
 ニーナとトーリ。素敵な響きの名前だなあ、と思い、少し自分で調べてみました。ニーナは小さな女の子を、トーリはならず者や盗賊を意味する。真相は定かではありませんが、それを知って、そうだよな、18歳という若さで知らなくても良いはずの腐った時間を過ごさなければならなかったんだよな、と綯い交ぜとなったあらゆる感情に飲み込まれてしまいそうでした。息を呑む美文にしたためられていたのは、彼女たちから見た、想像を絶するようなダークな社会。その中でもう一人、懸命に戦っていたのがトーリで。私の心をいとも簡単に奪った盗人、という点においては罪深いような気がしなくもない。しかし、どこを基準にするかによって、ならず者かどうかは変わるのではないだろうか、と考えています。ここまで話を広げることが出来たのは、紛れもなく、示唆に富んだ本作品のお陰ですし、他の方が拝読したら、また別の解釈が生まれる気もして。貴著はまさに彼らの深淵のように深いものでした。せめて、彼らが辿り着く次の景色は残酷なものが排除されていることを願っています。
 ”期待値0”。夢くらい見ても良さそうなのに、期待すらしないのはきっと、願ってしまえば、自分たちが壊れてしまうことに気付いていたからなのかもしれない。そんな風に解釈しています。別に見たくないわけじゃなかった。ただ、生きるために、全ての光から目を背けるしかなかった。そんな切実な想いが籠められている気もして、息の仕方も忘れてしまうほど苦しくなりました。それでも、自分の中で芽生える小さな小さな願いを全て相手の幸せに使うニーナの優しさに胸が張り裂けそうになって。ああ、なんて狡い女の子なのだろう、と温かい涙が頬を伝って。まさか、5ページという短さの中で、ここまで心を動かされるとは思いもしなくて、ただひたすら圧倒されました。どんなに追い詰められても、どんなに哀しくなっても、誰かのことを思いやれる。そんな、素敵な女の子になりたい、と強く思っています。
 聞こえていますか、天国の運営者。ニーナとトーリが、生きてた頃より、絶対幸せになってくれますように……
 素敵な作品をありがとうございました