「ねえ、この僕から逃げられると思う……?」
張り巡らされた罠はまるで蜘蛛の糸のように私を絡め捕り、全てを奪い取っていく。
……彩夏はその漆黒の瞳に、私の絶望を映して喜びを得る。
彼は歪んだ感情を隠すことも無く、狂った想いで私から思考さえも剥ぎ取ってしまうのだ。
◇◇◇◇◇◇
亡くなった姉の子、穂乃佳を引き取り育てている会社員の美雛。
そんな彼女たちを心配し親切にしてくれる、近所に住む大家の彩夏。
美雛に長年の想いを抱いたまま二人を見守る、彼女の幼馴染の芽吹。
会社の同僚でライバル関係だが、美雛への関心を隠せない男の千尋。
「……これは罰だよ、いい子でいてくれない君への」
「守らせてほしい、美雛のこと。俺にその権利をくれよ」
「お前が俺にそうさせるんだろ?そんな目をして俺を見るから……」
ただ穂乃佳と平穏に暮らしていくことが望みだった。
そんな美雛の日常はある日を境に崩れ始めていく……
いつもと違う雰囲気の作品に挑戦してみます。m(__)m