大正時代。旧華族の伊知地家の清子は顔に痣があるため日陰の身で育つ。清子17歳の時、経営が苦しい伊知地家に実業家の岩倉家との縁談の話が来る。相手は目が不自由な長男の朔弥。美麗な妹の優子ではなく、清子が嫁として出向くが、金目的と朔弥は心を閉ざし清子を拒む。しかし帰る家のない清子は介助人として岩倉家に住…

   「こんな私に嫁がされて、お前も不幸だな」

   「そんなことは」

   「貧乏華族の娘か、お家のために必死だな。哀れな事よ」


  

   そんな彼は孤独だった。

   私も一人ぼっち。



   暗い部屋から春の月が輝いていた。

   二人を照らす光は朧に輝いていた。