「ねえ、この僕から逃げられると思う……?」

 張り巡らされた罠はまるで蜘蛛の糸のように私を絡め捕り、全てを奪い取っていく。
 ……彩夏はその漆黒の瞳に、私の絶望を映して喜びを得る。
 
 彼は歪んだ感情を隠すことも無く、狂った想いで私から思考さえも剥ぎ取ってしまうのだ。



 亡くなった姉の子、穂乃佳を引き取り育てている会社員の美雛。


 そんな彼女たちを心配し親切にしてくれる、近所に住む大家の彩夏。

 美雛に長年の想いを抱いたまま二人を見守る、彼女の幼馴染の芽吹。

 会社の同僚でライバル関係だが、美雛への関心を隠せない男の千尋。


「……これは罰だよ、いい子でいてくれない君への」


「守らせてほしい、美雛のこと。俺にその権利をくれよ」


「お前が俺にそうさせるんだろ?そんな目をして俺を見るから……」


 ただ穂乃佳と平穏に暮らしていくことが望みだった。

 そんな美雛の日常はある日を境に崩れ始めていく……


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