【概要】
 大人のためのメルヒェン系小説です。空飛ぶ家やお話しする猫、それに空の上の世界や海の中の城などにときめく人に向けて書きました。ゆったりとした展開で、ふしぎな世界での旅を通じて、すこしずつ魔法使いの青年と少女が仲良くなるさまが描かれています。

【あらすじ】
 目覚めたら大聖堂の中にいた少…

白銀の森を抜ければ、開けた場所にでます。


 草ひとつ生えない絶壁の上からは、世界を広く望めました。崖下よりつづくのは、柔らかく世界の光を受けて、それをまた世界に返す、紫水晶の草原です。その澄んだかがやきの終わりには多彩な屋根――黄、橙、紫、青――を被る建物のつどいが、ひとつの街が、見えます。大空を貫かんとする塔マンボウを模したドームなどもあって、画家の使い古したパレットみたいに個性が重なり合っています。


 その鮮やかさを包む空もまた色彩豊かでした。桃色と橙色がいっしょになって溶けています。そこに羽を生やした人影がひゅらひゅらと旋回していて、これら景色の一番奥に在る山々はもうもうと菖蒲色の煙を揺らし、飛行船の行く手をはばんでおりました。