△は秘密色、○は恋色。~2人を幼馴染みを愛し、愛されてます~

作者蝶野ともえ

幼い頃から仲良しだった幼馴染の3人。それは、社会人になっても続いていた。
けれど、3人は幼い頃に交わしたある約束があった。

長い間、宮に片思いをしていた虹雫だったが、社会人になってもそれか変わらなかった。そんなある日、剣杜の計らいで宮と付き合う事になった虹雫。
それは、お試しの恋人という関係。






   プロローグ





 3人で燃える紙の束を見つめながら、手を繋いだ。


 「何かの儀式みたいだな」と笑った剣杜の冗談は、その場を和ませるものだと分かっている。けれど、彼の表情は口だけは笑っていて目は鋭かった。彼が怒るのは珍しい。いつも明るい笑顔が似合う彼には、全くもって似合わない。そう虹雫は思った。


 「全部燃えたら、忘れるの。紙みたいに、なかったことにする。だから、2人も忘れてね」

 「………」

 「それでいいのか?」

 「うん」



 返事をしなかったのは、こちらも見た事もないぐらい憤怒している宮だった。

 穏やかでクールな彼の表情は暗い。そして、じっと燃える火を見つめて、思考の深い所で何かを考えているようだった。



 「じゃあ、忘れよう。虹雫がそれで笑えるなら」

 「うん。だから、ごめん………今だけ泣かせて………」

 


 我慢していたはずだったが、最後の言葉は震えてしまい上手く発せられなかった。

 さっきから泣いてしまっていたが、その言葉を伝えた瞬間に大粒の涙が虹雫の瞳から落ちた。地面を濡らした水滴は、夏の暑さと、炎の暑さですぐに蒸発し、消えてしまう。この悲しみも同じように空に飛んで消えればいいのにと、虹雫は思った。

 泣ているせいで体が震えてしまう。きっと、この振動は彼らにも伝わってしまう。

 心配をかけてしまう。悪い気持ちにさせてしまう。

 そう思うけれど、この2人なら大丈夫。虹雫はわかっていた。


 それに、これはなかったことになる。

 全ての紙が燃えて灰になれば、虹雫の涙も消え、脳裏に描かれる苦しくなる事もなくなるのだ。

 そして、2人の前で泣いてしまった事も。




 もう2人には心配をかけないようにしよう。

 泣かない。強い女性になろう。


 そう決心をして、最後の涙を流した。



 これは1人の秘密が、燃やされた瞬間だった。

 3人の秘密はここから始まった。