ホウ、ホウと梟が鳴いていた。夜の静寂に響き渡る鳴き声。お昼時の明るい時間とはまったく違う姿をみせる樹海は、まるで黒い海のようだ。光をも飲み込む深い緑が、月明かりに僅かに照らされている。富士、青木ヶ原樹海。不名誉に有名なそこを、ひとりの男が歩いていた。
やがて自殺を決行しようとした男の前に、不可思議なコンビニが現れる。
男が恐る恐る店内へ入ると、スーツ姿の老人が立っていた。
「黄泉ノ前マート、富士の樹海店へようこそ。ここでは、これから死にゆく人のための最後のショッピングを提供しております」
これは、死を目前とした人々の前に現れる、奇妙なコンビニの物語――。