『あんなに優しかったパパもママももういない 』

両親が交通事故で亡くなったのは私が5歳の時だった———。

私は父方の祖父母に引き取られた。

『舞衣子ちゃんいっぱい食べて大きくなるのよ』

食卓に出されたご馳走は私のお腹をいつも満腹にさせていた——。

北河内舞衣子きたごうちまいこ(18歳)。身長155cm、体重90kg。


育ての親でもあった父方の祖母72歳、祖父76歳……死去。借金5億円以上。


定食屋【まんぷく堂 】も家も私は全てを失った――――。


私は祖父が病院で亡くなる3日前に書いたであろうたった2行の手紙の住所を便りに

その場所へと向かっていた———。


空腹のお腹の音は『グーグー』鳴って鳴りやまない。


「ああ、お腹すいたなあ。そう言えば、じいちゃんが生きてた頃はお腹いっぱい 

 食べさせてくれたっけ 」


「ハンバーグに唐揚げ、お好み焼き、イタリアンパスタ、調理パン。

デザートにチョコレートパフェ。ロールケーキ、シュークリーム。

じいちゃんは何でも作ってくれたっけ」


「ばあちゃんが作る料理も美味しかったなあ。

ばあちゃんの握るお寿司は最高に美味しい。ばあちゃんの煮物も絶品さあ」


「もう、美味しいご飯食べれないのかあ」


「こんなことなら、料理の一つでも習っとけばよかった‥‥‥」






ふと、舞衣子の足が立ち止まった———。


着飾った女の子たちの行列。ずらっと100人以上……


手に持っていた祖父の手紙を握りしめて、汗ばんだ手がベトベトしている……。

 

額から汗が流れ落ち、Tシャツは汗でビショビショ。舞衣子はグッと唾を飲んだ。


太陽の下、走るのも限界だった。


舞衣子の目に映ったのは………オシャレな建物のレストラン。


看板には楷書で書かれた【Beauty-Fool】の文字。



とてもじゃないけど舞衣子には不似合いなお店。店に入る勇気もない。




今何時? 何時間待っただろう……。 お腹の音は鳴りやまない。


「ほんと、おまえの腹は正直だね。ああ、腹へったあ」


「私、このまま何も食べれないまま死んじゃうのかなあ………」


次第に空も薄暗くなり、人気も少なくなってきた。

 

肌寒いと思えば少し風が吹いてきた。


その時、最後の客が店から出てきた。


もう、閉店の時間かな?



私は、店にゆっくりと近づいて行った………。


身なりなんて気にしている余裕もなく……。