【概要】


 女子高生の唯奈は、推しの男性アイドル『良ちゃん』を愛するあまり、同グループの人気メンバー『瞬』を敵視するようになった。

「良ちゃんを差し置いてセンターで歌う瞬が許せない」

 唯奈は掲示板やSNSで、瞬への負の感情を放出していった。

「これは批評だ。みんなやってる」

 彼女は自分にそう言い聞かせているうちに、善悪の判断が麻痺していく。そしてある時、瞬が突然に芸能界引退を宣言した。

 唯奈はそこでやっと正気に戻った。相手は人間だった、と今更気付いてしまった。画面上で言い放った酷い言葉の数々は、生身の人間である瞬に届いていたのかもしれない。唯奈はそう思って後悔した。しかし、もう遅かった。


 そして三ヶ月後、偶然にも瞬が転校生として唯奈のクラスにやって来た。

 一般人となった瞬は気さくで大らかな好青年で、唯奈が思い描いていたイメージと真逆だった。

 唯奈は自責の念から瞬と距離をおこうとするが、何故か興味を持たれてしまう。瞬を知れば知るほど惹かれていく自分に呆れ、過去の自分の行いを再び後悔した。

 心を許してくれる瞬に対し、このままではいけないと思った唯奈はついに過去の自分を打ち明ける決意をする。