1.何時ものエレベータでの光景。恋が芽生える?
2.恋は、ピンクかブルーか?

第一話 雨の日ピンク

 地下鉄、日比谷線、神谷町の出口を地上に出て、新橋方面に全力で走って行く。そして御成門界隈の古めかしいビルに入る。ここが、僕の勤務先がオフィスを構えているビルだ。通勤時は、毎朝、8時には走っている。ビルに入るなり、エレベーターホールにたどり着くと、4機あるエレベーターの上ボタンをすべて押す。あとは、エレベータが来るのを待つだけなのだが、イライラする。

 2号機来ました。扉が開く。飛び乗る。

急いで、15階のボタンを押す。空かさず閉まるを押す。連打する。やはり、ここで、白い細めのしなやかな手が、閉まり始めたドアの隙間に入ってくる。ドアの閉まるのを妨害する。予想、予定通りの現象である。開き直したドアから彼女は箱に入ってくる。少し恥ずかしそうに会釈をして。

そうして彼女は、11階で降りる。それが何時もの朝の風景。彼女は、今日は、夏用のワンピースドレス。ピンクの薄さが絶妙である。僕は思わず、彼女より先に、11階のボタンを押してしまった。彼女の降りる階、11である。彼女は、またも、上目遣いで、僕をみて会釈した。

彼女のピンクは絶妙で、目に残像として、何時間も残った。僕は、彼女に会える次の日のために、帰り路でもないが青山のブルックブラザースに行った。コットンのサマージャケットに、コットンのチノパン。色はネイビー。シャツは、白地にネイビーの縦じま。そして、ネクタイは、長めで、細すぎない、色は、彼女のドレスを意識して、今日の彼女のドレスより、少し濃いめのピンクにした。直ぐに着るわけではない。しばらくしてから着てみようと思う。

翌日、東京は梅雨に入ったようだ。小雨ではあるが、これから、一日中降ってやる、という勢いであった。

朝の出勤、8時過ぎ。やはり、僕が、ビルロビーのエレベータの全機の上ボタンを押す。今日は、1号機が来た。飛び乗る。閉まるを連打しながら、15を押す。ドアが、閉まりかける。女性の細い腕が入ってきて、ドアが閉まるのを止める。再び開く。彼女が入ってくる。会釈する。何時もの光景。彼女は、11階のボタンを押した。

朝からの雨と、神谷町からの歩きで、彼女の今日のネイビーのドレスが濡れてている。髪も少し、濡れたように見える。僕は、昨日、ブルクブラザースで、ネクタイに合わせて買った、彼女の昨日のドレスよりも少し、赤が強い色のタオルを彼女に渡した。

彼女は、ありがとう、と素直に受け取ってくれた。

翌日、僕は先日ブルックブラザースで買った、ネイビーのコットンのジャケット、チノパンを着こみ、朝のダッシュに向かった。

今日も雨は、軽めに振った。僕は、別に雨が嫌いでもないので、かまわない。

何時ものように、ビルに入り、エレベータに乗る。一時停止でやはり彼女が乗り込んでくる。

初めての言葉を交わす。僕はそれにふさわしい、ファッションスタイルで臨む。

彼女は、あの、ピンクのサマードレスであった。昨日、彼女に貸した、少しピンクのきついタオルを僕に差し出し、

「昨日はどうも・・・・・・」

と言った。差し出した、タオルは、僕の胸のネクタイと同じ色。先日、彼女が来ていたドレスよりもピンクがきついのだが、今日の彼女のドレスも少しピンクが強くなっていた。僕の貸した、タオルと同じ色である。僕のネクタイと同じ色である。ジャケットのネイビーによく合っている。

僕は、思わず

「あの~、今日、お帰りは何時頃ですか?帰りに渋谷に気の利いたブルースを聞けるライブハウスがあるんです。ご一緒、出来ませんか?」

と、彼女を誘っていた‼

(お~!こんなに積極的な誘いができるとは⁉会社の人達が聞いたら、それを仕事に活かせ!と言うだろう)

彼女は、一瞬のことで驚いて俯いてしまった。

「あの~、5時半、ここで」

と、快諾してくれた。